「エコな貴方に・・・」恋とニュースのつくり方 ダックス奮闘{ふんとう}さんの映画レビュー(感想・評価)
エコな貴方に・・・
「ノッティングヒルの恋人」を手掛けたロジャー・ミッシェル監督が、主演にレイチェル・マクアダムスを迎えて描く、軽快かつ爽快なラブコメディ。
物語の舞台をファッション誌編集部からテレビ局へ、偏屈な編集長を変人の元人気キャスターに取り替えた部分を除いた物語の基本的な構造、主人公ベッキーを演じたレイチェル・マクアダムスの顔の造形、そして登場する部屋の設計まで、徹底的に「プラダを着た悪魔」の要素を持ち込んだ作り手の遊び心。もう、ここまでくると天晴れである。
それでも本作が、「プラダ~」よりもあっけらかんとした陽気さに満ち溢れ、観客を爽やかな幸せに呼び込む力に優れているのは、小さないざこざも葛藤や困難も、少しの方針転換で笑いというエンターテイメントに変えていくことができるTVというメディア業界がもつ大らかさに由来している。普通ならありえない展開もメディアなら出来る。さすが、現場の空気を知っていればこその演出である。
形振り構わず、目的を果たすために猛然と突き進んでいく主人公、ベッキーの暴走と、キュートな魅力。そこには他人を平然と蹴落としていく卑劣さは無く、健やかなスポ根的成長に支えられる。だからこそ、思いがけず上手く行かない毎日を、暗い顔でいやいやこなす現代人の私達にとって、たるんだ頬や心をばちーん!と引っぱたいて檄を飛ばす、力強い優しさ、誠実さが物語に充満する。
形式的で、やや予測できてしまう展開も、「プラダ~」で観客が求めるストーリーをその手に収めた作り手の、「水戸黄門」の如き成功のシナリオ。素直に楽しみ、純粋に気持ちよくなってしまうのが正解である。
胡散臭い成分をこれでもかとぶち込んだ高価な栄養ドリンクを飲み続けて、押し付けの元気を手にするより、異様に高いエステで肌ばかり健やかになるより、本作をたっぷり味わい、笑い、心も身体も元気になったほうがよほど、経済的ではないだろうか。
本作にキャッチフレーズをつけるならば、私は開口一番、こう名付けよう。
「エコな貴方に、素敵に、元気!!」