「恋愛ミステリー。」瞳の奥の秘密 ハチコさんの映画レビュー(感想・評価)
恋愛ミステリー。
名画座にて。
第82回アカデミー賞外国語映画賞を受賞した作品とあって、
公開時も話題になっており、名画座にくるのも早かった^^;
…というわけで待ってしまった私v
想像した通り、重厚で濃味のサスペンスドラマだったが、
縦軸はそれとして、横軸には恋愛劇がずーっと横たわり、
それが過去と現在を繋ぐミステリーというかスリラー?の
ようにまた、深く重い。当時のアルゼンチンの背景をもっと
よく知っていれば、更にのめり込めたのだろうが…それを
知らずとも、何ともやるせない気持ちに陥る部分が多く、
とはいえ、小説に興そうとする主人公の行動に今からでも
遅くないという心の叫びが感じとれて、なかなか勇ましい。
過去という枠に封印してしまいそうだったとある事件から、
自身の諦めかけた恋愛魂を取り戻そうとするラテンの血が
流れ始め^^;あーやっぱりアルゼンチン!と思わせる作品。
瞳の奥に封印していた過去と、事件の真相とは…。
主人公(上司と部下)の二人と同僚のもう一人、更に犯人と
被害者の夫、という主な登場人物の誰が主人公でもおかしく
ないほどの掘り下げ方をしている。一見分かりづらい当時の
司法システムも「役に立たない」という引用に、Aが打てない
タイプライターを出して、これと同じだと斬るあたりも上手い。
遺された夫の行動が最後まで読めず、彼に絶大な信頼を
寄せていた主人公が真実を突き止めた瞬間…本来ならば
ここで安堵するのがミステリーの終焉なのに、心の底から
虚しさがこみ上げてくるという不思議な感情をもたらした。
しかし、冒頭からの細糸の絡み合いが、段々と少しずつ、
結ばれていくのは見事で、紡いでみたら、一本の太い糸
になっていた。という飽きのこない作品に仕上がっている。
身分という色目の違う糸をよることに不安を覚える年頃を
過ぎて、いよいよ諦めがかった年代におそらくは、多分の
活力を与えられる、ささやかでも鮮やかな色合いの物語。
(死刑制度についても、また考えさせられてしまいますねぇ)