劇場公開日 2010年8月14日

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「ミステリーとロマンスのバランスが絶妙な大人の映画」瞳の奥の秘密 マスター@だんだんさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0ミステリーとロマンスのバランスが絶妙な大人の映画

2010年8月25日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

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刑事裁判所を引退したベンハミンにはどうしても忘れられない事件があり、それを題材に小説を書き始める。その事件からは25年の歳月が流れていて、小説の内容を辿るように過去が回想されていく。事件の発生と、被害者の夫や犯人のその後が語られると同時に、ベンハミン自身の苦い過去も語られていく手法だ。そして、25年後の今、事件はまだ終わっていない事実を知ることになる。
けっこう重い内容なのだが、淡々とした語り口で少しずつ丁寧に紐解いていく推理と、登場人物の奥深い描写によって、じわじわと物語の中に引き込まれていく。
適度な笑いどころもある。ただ、観客の中に「三ばか大将」や「ナポレオン・ソロ」を知っている人がどれだけいたかは分からない。
冒頭の裁判所で、ベンハミンがすれ違う女子職員に軽口を飛ばすシーンがあるが、彼は昔からそんな気さくな性格ではなかった。なぜそうなったかは、あとで分かる。結構、細かい仕掛けが施され、飽きが来ない居心地のよさがある。とにかく脚本がいい。
また、主役のリカルド・ダリンとソレダ・ビジャミルが25年の時差を巧妙に演じ分ける。仕草だけでなく、声音も微妙に変える。メイキャップも巧い。
物語は事件の知られざる結末に辿り着くとともに、ある愛のカタチを通して、犯罪に対する刑罰がどうあるべきか、被害者感情も含めて問いかけてくる。
いささか暗く重い結末を押しのけるように、25年の溝を埋める行動に出たベンハミンには嬉しくなる。“簡単じゃない”かもしれないが、まだまだ再出発は可能だ。
ミステリーとロマンスのバランスが絶妙な大人の映画だ。

マスター@だんだん