「高校生で、こんなピュアな「最後の恋」を思いついた監督に脱帽」やさしい嘘と贈り物 めぐ吉さんの映画レビュー(感想・評価)
高校生で、こんなピュアな「最後の恋」を思いついた監督に脱帽
小さな町で、スーパーに勤めながら1人で暮らす老人ロバート。
働く…といっても、スーパーの片隅に座って絵を描いたりしてばかり。
そんな彼を、若い店長マイクは怒るでもなく、
むしろ店長室に呼んであれこれ相談している。
そしてまた、絵を描く彼をスーパーの棚からじっと見ている老婦人がいた。
その上品な老婦人メアリーが声をかけると、ロバートは一目で恋に落ちる。
なぜだろう、初めて会った気がしない…ロバートはそう感じた。
メアリーとのデートの約束を取り付けたロバートは
喜び勇んでマイクに段取りを相談する。
一方メアリーの家では、娘のアレックスがロバートとのデートに反対していた。
「お母さんがこれ以上傷つくのは見たくない」と。
しかし、メアリーはロバートとデートを重ねていくが…
なんともやさしく、美しい“ファンタジー”です。
そう、これを「泣ける映画」とか「家族の感動作」とかを期待して見てしまうと、
「ものたりない」「甘い」と思えてしまうかもしれません。
何より私が素晴らしい!!と思ったのは、
弱冠24歳でこの作品を撮った監督(本作が長編デビュー作)がこの原案を思いついたのが
高校生のときだということ。
すごい。
高校生で、こんなピュアな「最後の恋」を思い描けるなんて。
はっきり言ってしまって、ボケてしまったロバートが
メアリーに出会い、どうやってデートしようかと悩んで
周りの人(息子にまで…)に相談し、
ドキドキしながら支度をしたり、電話を待ち焦がれている姿は、
まさに“高校生”の頃の恋そのもの。
これを高校生で描いたって、当たり前すぎてなーーんにも面白くないはず。
それを、お年寄りを主人公にしたことで
なんとも初々しく、かわいらしく、
不思議なふわふわ感のある“おとぎ話”に
なっているのです。
こんなことは自分には起きないだろうなーと思いつつ、
老いてもこんな恋ができたら幸せだろうな…と
この作品の持つ優しいパワーにほっこりと癒される作品でした。