「演出の手綱捌きに深みがない」やさしい嘘と贈り物 マスター@だんだんさんの映画レビュー(感想・評価)
演出の手綱捌きに深みがない
童話にでも出てきそうな家に、ゆったりとカメラが入っていく。
何の予備知識もなく観たら、そのまま楽しめたに違いない。だが、そんな人は映画館に足を運んだりしない。この作品を選んだ時点で、話の大筋を掴んでいる人ばかりだ。
そうなると、本来、謎に包まれるべき人間関係の謎を紐解く趣向は完全に空回りだ。物語の核に触れる部分を晒しても成功する作品は数多ある。最近の作品でいうと、「インビクタス/負けざる者たち」「しあわせの隠れ場所」などがそうだ。邦画の「ゴールデンスランバー」も大筋が判っていながら展開が楽しめる。
要は肉付けなのだが、ニック・ファクラーによる脚本と演出は、古くさい映像美を追うだけで、夫が家族を忘却したいきさつにもまったく触れていない。
新しい恋にときめく夫に対し、再び愛を取り戻したものの、別人として生きて行かなくてはならない妻の苦悩もおざなりで、手綱捌きに深みがない。
真実を隠したまま売り込めるファクターも見あたらない。
マーティン・ランドー演じる老人が、徐々に色気を取り戻す姿は微笑ましく可愛いが・・・。
主要な4人がそれぞれに持ち味を出しているだけにもったいない。
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