「映画としては。」ミッシェル・ガン・エレファント“THEE MOVIE” LAST HEAVEN 031011 ezioさんの映画レビュー(感想・評価)
映画としては。
私は幼い頃に"それなりに"ミッシェルが好きだった母親の影響でアルバム『カサノバスネイク』が録音されたMDを繰り返し聴きて脳内に刷り込まれており、それを自覚せず中学生3年の頃にそのMDを親のMDケースから発見、それ以来聴きまくりCDやライブDVDを揃え最終的にはアナログ盤をコンプリートするほどとなったのは高校を卒業した頃。思い返すとハマった時にはすでにアベはこの世にいなかった。
大画面、大音量で見ると『ドロップ』『ブギー』『赤毛のケリー』『エレクトリックサーカス』のようなローテンポの曲はチバの歌詞がより頭に入ってきた。それは抽象的で、詩的で、”終わり”について考えさせられる。青春の終わりや旅の終わり、それは人生の終わりにも共通していて、悲観せず誰しもが考える死について「俺もそうだよ」と優しく肯定し、肩を組むようにみせて支えてくれているようだ。
無論ラストライブの映像は繰り返し見て、本作もDVDを購入し数年前に観た。今回リバイバル上映されることを知り劇場へ足を運んだが、初めて観た時の印象そのままの映画だった。本編はライブ映像がほとんどで、合間に差し込まれるのは今や貴重な地上波やスペースシャワーでのインタビュー映像、98年フジロックでの有名な一幕やツアー中、ライブ中断をめぐるバックステージの様子。始まりと終わりに入れられた村上淳のナレーションとライブ会場での観客の表情。本編の9割はラストライブの演奏で占められており、”ドキュメンタリー映画”としては薄味のものになっている。サブタイトルが-Last heaven 031011-となっているので「それを狙った」と言われればそれまでだが、やはりファンとしてソフト化もしているライブ本編よりもライブ前後のバックステージやそれに至るまでのバンドとしての軌跡、ラストツアーの様子やメンバーへのインタビューなどここでしか見られない映像が欲しかった。
ラスト直前のアベの笑顔はライブ映像終盤への導入として非常に感動的なものであったし、ライブそのものは勿論素晴らしく、それだけで涙腺を刺激されまくり★5でも足りないくらいだ。映画館の大画面で、しかも最前列でライブを体験できたことは何事にも変えられない思い出にもなった。こういった映画として形に残っていなければそれもできない体験できなかったのだということも分かっている。でも、ここは映画のレビューをするところだと思い、評価は3.5とした。
チバも旅立ってしまったことは悲しい。
が、これを機にチバやバンドの足跡を辿るようなドキュメンタリーが観られることをに期待する自分もいる。