「面白い!、続編も大いに期待してしまうぞぉー」ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女 こもねこさんの映画レビュー(感想・評価)
面白い!、続編も大いに期待してしまうぞぉー
昨年のミステリー部門で最も面白いと言われた小説の映画化だが、そういう作品は案外期待ハズレ、なんていうのが多かったりする。ところがこれは、期待どおりに面白い!。こんな時期に言うのは何だが、今年のエンタテイメント映画の中で、この作品以上に面白いと言える作品に巡り会えるかと不安になってくるぐらいに、たっぷりと堪能してしまった。
まず第一に面白いのは、主人公たちが決して正義感を振りかざさず、またスーパーな人間というわけでもない点だ。例えばヒロインのリスペットは、映像記憶力には長けてはいるが、レイプされてしまったり、過去のあやまちを引きずる少し弱さをもっている。ところが、決して弱虫ではない。やられたら二倍、三倍にしてやり返すくらいの反発心をもっているところがとても清々しく、爽快感さえ感じくらいに魅力的だ。また、一方のジャーナリストの男も、一発屋的なところがあるいやらしさに人間的な魅力があったりする。思わず惹きこまれる人間が主役として登場しているだけでも、この作品は成功と言えると思う。
そしてもうひとつの面白い点は、映画の舞台となったスウェーデンの戦中から戦後にかけての歴史に視点を置いていることだ。あまり知られていないが、スウェーデンなどの北欧はナチスの考え方をスンナリと受け入れてしまうくらい、白人偏重主義の土地柄だった。実際、北欧の巨匠監督のベルイマンは、ナチスの時代の地元の牧師が、ミサのときに聖書からヒトラーの「わが闘争」へと話が変わったとき、神への不信を感じたと自伝で書いているくらいに、大戦中のスウェーデンはナチスに傾倒していた者が多かったそうだ。そのことを、この作品では鋭く突き、さらに踏み込んでいくストーリー展開にはドキドキさせられた。北欧の恥部ではあるが、そこに特化していることもミステリーとしての評価を高くしていい点だと思う。
ただひとつ、難を言えば、原作よりも孤島の中という閉塞性が、もうひとつ表現しきれていなかったことだろう。その部分でいかにも北欧らしいシチュエーション、というのを楽しめなかったのは、少し残念に感じた。
このシリーズは、あと二作品続く。最初にハマッてしまった以上、見逃せなくなった。次回作も絶対映画館で観たくてたまらない。