ずっとあなたを愛してるのレビュー・感想・評価
全2件を表示
死ぬことも、生きることもできない
神が最も怒り狂う罪ではないだろうか?
医者である、実の母が幼い息子を殺すというのは・・・
そんな大罪を犯したジュリエットは15年の刑期を終え出所する。
やむなく妹夫妻の住まいへ身を寄せるのだ。
妹・レアと待ち合わせしているジュリエットは憔悴しきった顔をしている。
刑務所でもこの表情をしていたはずだ。15年間ずっと・・
レアの夫はジュリエットを迎え入れることを反対していた。
当然のことだろう、幼い娘が二人いるのだから。
レア自信も親に、姉は死んだと思えと刷り込まれて育った。
15年の空白のあと、姉と接するのは大変なはずだ。
ジュリエットは取調べでも裁判でも一切、殺害の動機を語らなかった。
大きな謎がジュリエットと家族との溝をより深いものにした。
15年間、家族の面会はわずかだった。
ジュリエットは居心地悪そうに、レアの家での時間を過した。
それでもレアは、根気よくジュリエットとの対話を持ち続ける。
幼い娘の無作為な無邪気さに、少し心が和らいだ。
時間をかけて、レアの家族とも打ち解けていった。
ジュリエットの仕事が決まった時には、みんなで大々的にパーティーをして祝った。
その頃、レアはジュリエットが落とした写真と紙をひろった。
そこには、全ての謎の鍵となる内容が記されていた。
それを調べたノラはジュリエットになぜ相談しなかったんだと詰め寄る。
そこで初めて、ジュリエットは泣き叫ぶように、殺した理由を語りだした。
ジュリエットは一生、殺した理由を話すまいと決めていたのではないか?
誰にも弁明せず・最大の刑期を受け・この世の中全員に軽蔑されたまま死んでいく。
死ぬこともできず、生きることもできない。
そんなジュリエットの、歪んだ生きる目標だった。
レアの温かさに、その思いも僅かに溶けていった。
話すべき人に、話すことができた。
これ以上ない救いになったはずだ。
ジュリエットの回復と再生の日々がここから始まる。
罪の極みを犯した人間も、いつか救われる、生きてもいいんだよ。
罪を突き詰め、真に受け入れたなら。。。
そう語りかけてきます
静なる絶望と幸せ。
名画座にて。
実は私も多くの意見とほぼ同じで、この事件の真相を
いちばんのメインに考えていた1人だった。
なのでラストに明かされる真相を…あぁ~そうなんだ。
(まぁその前でなんとなく分かるが)という平常心で観て
しまったせいか、衝撃というものは感じない作品だった。
それよりやはり本作は、主演のK・S・トーマスの演技と
妹役のE・ジルベルスタインのコラボを観る作品と思った。
幼い我が子を手にかけた母親の絶望感と生の無意味さを
淡々とみせるトーマスの演技が秀逸で、他を排する行動
をとればとるほど、実は人間的に豊潤な心を持っている
ことが露呈される姉。どう見ても彼女が殺人など起こす
とは思えず、これは何か理由があるのだとすぐに分かる。
そして、十何年もの間両親から姉のことを忘れさせられ、
ただ自分の幼い頃の記憶のみで姉を迎え入れる妹。
この妹のとる行動が真に素晴らしくて、猜疑心を向ける
夫や娘たちをも納得させる勢いがある。
あぁ家族って、、、姉妹って、、、と感動してしまう場面。
タイトルのずっとあなたを…というのは誰でも当てはまる。
地味で淡々と紡がれていく物語なのに、次第に心が温かく
なってくるのが分かる。そんな作品だ。
推理的要素やサスペンスタッチを期待すると肩透かし。
フランス式心の旅路のような家族の再生物語となっている。
(豊かな心に育つためにはやはり愛に満ちた記憶が大切だ)
全2件を表示