「号泣する人と、怒りすら込み上げる人とにわかれそうですね」悲しみよりもっと悲しい物語 septakaさんの映画レビュー(感想・評価)
号泣する人と、怒りすら込み上げる人とにわかれそうですね
泣かせにきますね
やっぱり泣いちゃったよ
~~
終盤、そこかしこから鼻水を啜る音が。
私も、こらえきれず涙が頬を伝っていきました。
しかし、客電点灯後、事件発生。
「全然悲しくないじゃない。あきれてものも言えなかったわよ」
私の2列前に座るおばさん2人組、失笑を浮かべながら大声で言い放つ。
私は、その感性に逆に興味を持ち、どのような表情をされているのか、
そのあとにどのような言葉が続いてくるのか、まじまじと見つめてしまいました。
ただ、期待に反し、苦笑いを浮かべるばかりで、
その後、言葉を発することはありませんでした。
まるで私の位置が天気図の前線のようで、
逆に私のうしろは「泣けた。よかった」と賛辞の嵐でした。
私が前線イコール、暖気と寒気がぶつかり合う場所ですから、
私が一番泣いていたとも、言えるわけなんですけどね(苦笑)
◇ ◇
韓国で公開されたのは丁度1年前。
2009年3月12日。
ウォン・テヨン監督、
詩人としては有名も映画監督は初めて。
クォン・サンウ、イ・ボヨン、イ・ボムス
主要3キャストが出演ギャラを全額製作費に
投資したことも話題になっていたそうです。
それだけのパワーをシッカリと感じさせてもらいました(笑顔)
作品チラシにも書かれていましたが
『私の頭の中の消しゴム』これがツボだった人
おそらく、今作も泣いてしまうと、思います。
今作もある種、難病モノですし、
おぼろげに見えている結論に到達するまでの過程に
どれだけオリジナリティを発揮できるかにかかってくるわけですから。
私は、今回の展開手法は、好きです。
ここは『今度は愛妻家』で泣けた人なら受け入れられるはずです。
つまり、今作も
「ここでクリームは、こう思っていたんだ」と知りながら観る。
1回目は普通に観て、2回目は登場人物の気持ちを振り返りながら観る、
そんな作風になっていました。
個人的には印象に残った役者さんは
悲しみに満ちたカップル2人よりも
脇に位置したイ・ボムスさんと、チョン・エヨンさん。
ウェディングドレスを選ぶ店にいる2人を遠巻きに見つめる
イ・ボムスさんの哀愁漂い、すべてを悟ったかのような表情。
店の中にいる、2人の表情とは対照的で、心にグッとくるものがありました。
フォトグラファーを演じた
チョン・エヨンさんは、異質な存在感を
示していたのですが、プロフを見ると、本業はモデルでした。
おそらく今作中において
クォン・サンウの心の闇を一番理解し、
支えていたのが彼女だと思うのですが、
悲しみ一色に作品世界が染まりかける中、
私は、この作品に純白色をイメージしたのですが、
彼女が、作品に混乱を与える、黒ではない、紫色っぽい
雰囲気を醸しだし、ただのメロドラマにしないような奥行きを提供してくれていました。
彼女が最大の功労者と言っても過言ではないと思います。
☆彡 ☆彡
怒っていたおばさんなんですが、
正直、気持ちはわからなくもありません。
主要な登場人物たち、
全員あと一歩を踏み出さないんです。
その一歩を踏み出せば世界は劇的に変わるはずなのに。
『僕の生きる道』
草なぎくん、矢田さん夫婦の行き方を支持する人には
ストーリー上しかたがないのだと、生理的に受付けられないのかもしれません。
突っ込みどころを突っ込まずに
主要キャストたちの心情を理解し共感する。
これが今作の正しい楽しみかたなんだろうな。
詩人っぽい、叙情的な映像もよかったですよ(笑顔)