「なかなかの健闘」携帯彼氏 かみぃさんの映画レビュー(感想・評価)
なかなかの健闘
自ブログより抜粋で。
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結論から先に言うと、意外なほど面白かったんだな、これが。
まだまだ演技のつたないティーンアイドルが主演で、監督も劇場デビュー作であることを考えればなかなかの健闘。
まずは美少女アイドル映画としての一番の見所、初々しい女の子たちは、センスのいいファッションも相まって、その一生懸命な熱演ぶりを眺めているだけでもけっこう楽しかったりする。
カルピスウォーターのCMでも魅力を遺憾なく発揮している川島海荷のかわいらしさは言うに及ばず、彼女以上に身体を張って映画を盛り上げた朝倉あきの奮闘も目を惹く。
ドラマ的においしいところは主役である川島海荷に持っていかれるが、サスペンス映画としての真の功労者は彼女と言っても過言でない。
付け加えると、端役ながらその役回り以上の存在感でこの映画を支えたのが女刑事・浅沼美紀役の星野真里。
この映画の感想を述べるにおいてほとんど取り上げられることはないであろうこの役を、ひょうひょうと演じた彼女の果たした功績は大きい。
いまひとつ牽引力に欠いた序盤、この映画の醸すただならぬ空気感が、彼女の登場によって決定づけられたと思う。
キャストとしては二人しか登場しない刑事さんの二番手、つまり文字通り脇役の刑事さんなのだが、なんの裏もないこの女刑事、たたずまいがなんか変なのだ。
そんなわけで一応ホラー映画的な宣伝がなされている本作だが、目に見える形での残酷描写はほとんど皆無で、記憶が確かなら流血が映ったのも1カットのみ。狙っている客層を考えれば、映倫の年齢制限が付くのはなんとしても避けなければいけなかったのだろう。
そんな映画だから同じく携帯電話が題材になっていた『着信アリ』(2004年、監督:三池崇史)などと比べるまでもなく、恐怖映画と呼ぶにしては、まったくと言っていいほど怖くない。
ただこれは、筆者がほどほどホラー慣れしているせいなのか、劇中の女子高生らと同世代と思わしき観客の女の子たちは、上映終了後、「怖かった~。ケータイ開けないよぉ」などと言いながらキャッキャ騒いでいたので、若い観客にはそれなりに怖い映画になっていたらしい。
自分にとってこの映画の魅力は、いわゆるホラー映画としてより、次々と予期せぬピンチが訪れる追い込まれサスペンスにあった。
その鍵を握っているのが、ゲームの「携帯彼氏」を巡る様々なルール。
プレーヤーとアバターとの相性を数値化した“ラブゲージ”が0か100%になると死ぬという基本ルールに加え、アバターを赤外線通信で他の携帯に転送すればラブゲージがいったんリセットされ危機を回避できるというルール、それを利用した人間同士の駆け引きがスリリングであったり、ラブゲージが0になっても死亡フラグが立たない場合があることが途中で判明するなど、脚本上の物語を転がす工夫が最後まで飽きさせない。
その一方、不気味さを出すことに成功している妙に落ち着かない演出が狙いなのか、下手な演出がカメラマンの手腕のお陰でたまたまいい味を出しているだけなのかわからないところがあって、監督としての力量の判断は次回作に持ち越しといったところ。