「マスクとカラスとペガサスと」ローン・レンジャー 浮遊きびなごさんの映画レビュー(感想・評価)
マスクとカラスとペガサスと
『パイレーツ・オブ・カリビアン』3部作の
監督ゴア・ヴァービンスキーと主演ジョニー・デップが再タッグ。
アーミー・ハマーとのW主演で往年の西部劇ヒーロー
『ローン・レンジャー』を映画化したアクション大作。
小さい頃に『ローンレンジャー』の再放送アニメを観ていた記憶が
あって、「ハイヨー、シルバー!」の掛け声やメインテーマ
くらいは知っている。けどトントってもっとスッキリした顔の
兄ちゃんだったような(笑)。
最初に欠点からツラツラと書いてしまう。
ジョンとトントの主人公コンビの掛け合いはそれなりに楽しいが、
どうにもキレが悪い。
ヴァービンスキー監督作品を観るといっつも思うのだが、
ユーモアのシーンが冗長で、物語の勢いを削いでしまっている。
それに加え、今回は回想シーンが頻繁に挟み込まれるのだが、
これが更にテンポを悪化させていると感じる。
正直、この内容で150分は長い。もっと切り詰められたと思う。
長いと感じる理由は他にもある。
150分もあるアクションエンタメ大作なのに
大きなアクションシーンが最初と最後だけというのは結構寂しい。
序盤の酒場のシーンやクライマックス前の銀鉱のシーンとか
大きな見せ場があると期待して肩透かしを喰らった感。
なんでも本作、製作開始時から予算に関するトラブルが
あったらしいっすね。スタジオが納得する製作費に納めるために
アクションシーンをカットしただの、悪天候で撮影が
長引いて予算超過しただの。
はい、ここまでブツブツと書いてきたが、
判定3.5 は『観て損ナシ』の意味で僕は使っている。
まず、ここぞとばかりのアクションシーンは流石の面白さ!
序盤のアクションシーンから主人公コンビ大暴れで
ここだけで並のアクション映画のクライマックスと
同じくらいの迫力はあります。
そしてラストを飾る列車上でのアクションシーンは、
それまで散々待たせてくれただけあって大迫力!!
走行する列車と列車の間をヒョイヒョイ跳び移りつつ、
敵味方入り乱れての丁々発止のやりとりが楽しい楽しい!
「今の映画に合わせるには古臭いか」と思っていたあの
カラッと明るいメインテーマも見事にハマり、テンション
上がりまくりの見事なクライマックスに仕上がっていた。
この監督さんは、大掛かりな舞台を活かしたアクションの
見せ方、使い方はホント巧いね。
それに相変わらずジョニー・デップがヘン(←誉め言葉)。
主人公を食うスレスレのところで踏みとどまってはいるが(笑)、
頭のカラスに餌付けする姿はかなりイっちゃってる。
そうそう、魂を導く白馬(スピリットホース)の
スっ惚けた活躍ぶりも笑えました。
アイツ、ホントはペガサスか何かなのか?(笑)
実は一番活躍してたのってアイツだった気が……。
主人公ジョンとトントが抱える想いをしっかり描いた点も好印象。
偉大な兄とその妻・息子へ向けたジョンの優しさが泣ける。
トントの過去も、復讐に懸ける気持ちが伝わる悲しい過去。
どちらもグチグチ言いつつ孤独(lone)な者同士で気が合うのかも。
それに、はぐれ者にしか為せない正義だってある。
最後にローン・レンジャーコンビが旅立つシーンの頃には、
すっかりこのコンビが気に入ってしまっていた。
最後にひとつ。
この映画では、白人によって故郷を奪われ消えてゆくインディアン
――敢えてこの呼称で書く――の悲しみも描かれている。
(本国アメリカで本作が苦戦してるのはその辺も影響
してるんじゃないかと勝手に思っている)
これも物語を鈍重にしてしまっている要素のひとつだと思うし、
エンタメとしては不味い選択だと思うが、そこを敢えて
省かなかった事は悪く言う気にはなれない。
エンドロール、どことも知れない家路を歩むあの人の背中が寂しい。
〈2013.08.03鑑賞〉