「ハリウッドの決まり切った型にはまっているパニック・スリラー作品つまんない!とお嘆きのかたには、予測不可能な現実感があって、絶対はまると思いますよ。」アルマズ・プロジェクト 流山の小地蔵さんの映画レビュー(感想・評価)
ハリウッドの決まり切った型にはまっているパニック・スリラー作品つまんない!とお嘆きのかたには、予測不可能な現実感があって、絶対はまると思いますよ。
“世界天文年”にあたる2009年。日本でも、1月22日より公開した『ザ・ムーン』や、夏に公開を控える『宇宙へ』、そして7月22日には、日本でも実に46年ぶりに皆既日食が観察できたりと、宇宙関連の様々な作品が公開されます。
本作も、字幕監修に(財)日本宇宙フォーラムがついているなど、科学考証をきちんとしたドキュメンタリーかな?学術映画を見せられそうで、こりゃつまんなさそう~と思っておりました。映像自体は、どう見ても当時の船内のものとしか考えられないリアルな記録映像なのです。
しかし次々起こっていく衝撃的な事故・事件は、まるでエイリアンもののパニック・スリラーに酷似した台本によって、次はこうなると設定されたように発生していくのです。
そして、次々死んでいく乗組員たちの最後の瞬間を実にタイムリーにカメラはクローズアップします。いくら船内に監視カメラがたくさんあるとしても、定点カメラではとらえきれないようなカメラワークで、恐怖の瞬間を捕らえているのです。
当初はドキュメンタリーを見ているという淡々とした感覚だったのが、否応なしに緊張されられていきます。それは『REC/レック』のようなポイント・オブ・ビュー(P.O.V)作品を見ている感じになっていって、画面に引きつけられていきました。
パニックの原因は、当初軍事目的に打ち上げられた“アルマズ号”の軍事脅威の隠蔽が原因であるように演出されていました。
ストーリーは、“アルマズ号”の買収目的で乗船してきた西側欧州宇宙機関ESAの調査員から隠蔽するためロシア情報機関が仕掛けたようにみられるような複線を見せていきます。
対するESAの調査員もまた、西側情報機関から密命を帯びているものもいて、そいつの破壊工作によるトラブル発生かとも思えました。
しかし、事故の起こり方や乗組員たちの異常な殺され方をみていると、目に見えぬ何かが“アルマズ号”を意図的に操っているとしか、思えない状況なのです。
そして決定的なのは、軍事利用のパルス発信装置の送信部分に向けて、大量の意味不明な2進法のデータが送られていたことです。スタッフの懸命な解析により、データの中身は、超高解像度の地球上の画像であることが判明。しかもナスカの地上絵など古代文明の遺跡の映像ばかりなのです。
スタッフの驚きは、画像自体ではなく、パルス発信装置の出力方向が、地球でなく銀河系の核の方に向けられて設定されているのに、なぜか地球側の鮮明な映像がモンターに映し出されることでした。
ここにいたって、乗組員たちは地球外生命体が何等かの目的でコンタクトしようとしていることを感じずにはいられませんでした。それを暗示するかのように、何度も宇宙船の窓から、いくつものUFOらしき光の点滅が描かれました。
普通のパニック・スリラーならここからエイリアンとのバトルになっていくのですが、大量のデータ通信に電力を奪われた“アルマズ号”は、軌道を外れ、墜落していきます。
むしろ、問題はすべてのストーリーが終わったエンディングから。
ロシア政府よりも、ウクライナの“アルマズ号”墜落現場に駆けつけたのは、反政府勢力グループ。彼らが“アルマズ号”のブラックボックスを政府より先に拾得したために、本作品の映像が隠蔽されずに公開される運びになったようなのです。
ブラックボックスには、スタッフが命がけで保存した地球外生命体からの送られてきたデータが残されていました。エンドロールでは、反政府勢力グループに、その顛末をインタビューしています。
グループ代表は、衝撃的な事実を告白します。ブラックボックスのデータの解読作業を進めていくうちに、予防不可能なウィルスソフトを解凍してしまい、それは瞬く間に地球上のインターネット空間に潜伏してしまった。解析の結果、ウィルスが作動すると、地球上のあらゆる基幹系のシステムが破壊されてしまうのだという。
今現在は、潜伏しているが2012年12月には、潜伏を終え、破壊活動を開始する見込みなのだそうだ。
2012年という年は、予言専門家の間では、ノストラダムスの2000年に続く、人類滅亡の終末予言がなされている年です。実際に、2012年には小惑星の大接近があり、イラクvsイスラエルの核対立、経済的混乱から国際緊張が高まったり、鳥インフルエンザが猛威をふるったり、世紀末的様相を示すことになるでしょう。
そういう地球人類の混乱を見据えて、地球外生命体が何か啓示を人類に与えるために、本作をプロデュースしたのか、謎です。作品自体がサイトで詳しく説明されておらず、秘密のベールに覆われています。
使われている映像もどこまでが実録で、どこまでが演出なのかはっきりわかりません。
ただ一ついえることは、ハリウッドの決まり切った型にはまっているパニック・スリラー作品よりは、現実感があって、予測不能なストーリーでハラハラさせられる本作の方が、遙かに面白いということ。
そして見終わったとき、どこまでが真実か、すごく好奇心が疼いてしまう作品であったということでした。