ミーシャ ホロコーストと白い狼のレビュー・感想・評価
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なんといっても、これが初主演となる子役のマチルド・ゴファールの体当たりの演技が素晴らしい!撮影当時わずか9歳の少女が、ミミズを頬張る迫真の演技。
たった一人の8歳ユダヤ人少女ミーシャが、着の身着のままで、ナチスに捕まった両親を捜して、居住地ベルギーのブリュッセルから、小さなコンパスの針が示す東へ目指し、はるばるドイツ、ポーランド、そしてウクライナまで旅をする作品です。
途中、ドイツ軍に追い詰められたり、危うく食べ物を仕込む罠にはまって、間一髪捕まりそうなるピンチを切り抜け、極寒と飢えを耐え抜いていくサバイバルなストーリーでした。
なんといっても、これが初主演となる子役のマチルド・ゴファールの体当たりの演技が素晴らしい!撮影当時わずか9歳の少女が、極寒のロケ地に連れて行かれ、ぼろぼろの服に、ぼさぼさの髪、そして泥まみれ化粧で、けなげに演技しているのです。しかもアドリブも入れて!ホントに天才子役です。
サバイバルな演技は、それだけではありません。リアリティーを追求した監督は、こともあろうに、マチルドちゃんに泥水を飲ませ、ミミズを頬張らせ、野ウサギを皮の上からガブリと喰らわせるシーンを演じさせたのです。トリックなしのシーンは、見ている方が、かわいそうになりました。さすがに天才少女マチルドちゃんでも、ミミズを食べるシーンでは本当に気持ち悪がっていたそうで、監督は「私のことを死ぬほど恨んだことだろう。」と作品のプロダクションノートで懺悔していました。
暗いストーリーの中で、ほのぼのさせるのは、冒頭のナチスから避難してきた先で出会った、老夫婦との心許し合うシーンとミーシャーを救う白い狼との触れあうシーンでした。
一面の雪原が続く中、ミーシャは精根使い果たして倒れてしまいます。そんなときミーシャを救ったのが白い狼でした。しかし、ミーシャーは狼とは気づきません。何しろ、白い狼は、仲良しだった老夫婦のペットの雌犬ママ・リタにそっくりだったのです。
ミーシャーには、不思議な才能があって、どんな猛犬でも手名付けて、ゴロニャン(^^ゞとさせてしまうことができました。それは犬ばかりでなく、狼にも有効だったのです。
ミーシャーとママ・リタと名付けた白い狼との共同生活が始まります。どんなときでも狼ママ・リタは、ミーシャーに寄り添い、うずくまって外敵や寒さからミーシャーを守るのでした。
ただママ・リタは、これまた仲良しだったペットの雌犬ハパ・リタそっくりの黒い雄狼と出会ったとき、恋をしてしまい、子作りのためミーシャと別れてしまいます。
ひとりぼっちになってからのミーシャの旅は過酷さを増しました。
しばらくして、ミーシャは灰色の子犬の群れと出会います。子犬たちと早速仲良くなった先にいたのは、母となったママ・リタでした。ママ・リタとその子供たちとミーシャが無邪気にじゃれ合うシーンが感動的でした。仲良く行列しているシーンは、『きつねと私の12か月』の同じシーンにそっくり。でもこのあとママ・リタ一家に悲劇が・・・。
ところで、キツネより狼の方が、人間になつきにくいはずでは?
ミーシャを演じているマチルドは、ミーシャのお株を奪う素晴らしい調教師ぶりを発揮したそうです。なんと天才少女なんでしょ。一つ気分を害すると役者に噛みつきかねない危険な狼たちでも、マチルドがナデナデしてあげると、警戒を解いて、彼女の指示に温和しくしたがったそうなのです。だから狼と絡むシーンは、演出ではないというところも凄いでしょ!
やがてたどり着いたウクライナで、言葉は通じなくても、人情深い一家に助けられて、安住の地を得ましたが、やがて終戦を知り、再びミーシャは、両親を捜すべくブリュッセルに戻ることを決意します。またまた歩くのねぇ。
ブリュッセルにはたどり着いた者のミーシャは病気になり、生死を彷徨います。そこまで、マチルドちゃんに過酷な演技をさけるのかぁ!監督のオニ!と叫びたくなるような壮絶さでした。
さて、ミーシャは、旅の目的であった両親との再会はどうなったかは、画面でご覧ください。仲良しのママ・リタとハパ・リタと再会できたのは良かったけれどね。
ミーシャの体験するホロコーストと苦難の旅を通じて、戦争の悲惨さを伝えてあまりあるストーリーでした。
また『皇帝ペンギン』の音楽を担当したエミリー・シモンは、本作でもベースとギーターのシンプルなアコーステック編成で、大自然に抱かれた映像美を引き立てていました。音楽も素敵です。
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