アニエスの浜辺のレビュー・感想・評価
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映画の中の虚構と真実
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左右が逆に映る鏡は、虚構を映すものだと思っている。とすれば、左右をそのままに写す写真は真実ということか?ならば映画も真実を映すものということになる。女性作家としてヌーヴェル・ヴァーグを牽引して来たアニエス・ヴェルダが80歳を超え、自身を語る映像エッセイ。彼女の人生の要所要所で登場する“浜辺”の風景。人生を振り返ると、打ち寄せる波の如く家族や友人、そしてかけがえのない夫のジャック・ドゥミなど、彼女にとって大切な人々が“真実”の姿のまま本作に登場する。しかしその“真実”は、時空を超え、空間を超え、心象風景としてモダンな街中を浜辺に変えたりする。現代アート風な映像のコラージュにヴァルダ監督のセンスを感じる。ヴァルダ監督の目を介して観る“真実”は、個人の人生の枠を超え、そのままフランスの、世界の歴史の足跡をたどってゆく。浜辺に置かれた無数の鏡。そこに映り込む海、空、彼女自身や周囲の人々。彼女の描く“真実”の中に映し出される虚構・・・。それこそがアニエス・ヴァルダの思う「映画」の姿なのだ。
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