劇場公開日 2009年7月25日

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「クララの新しい魅力」クララ・シューマン 愛の協奏曲 shikahikoさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5クララの新しい魅力

2010年2月4日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

知的

自らが一流の芸術家であり、母であり、精神的に不安定な夫を支えて家庭を切り盛りする主婦として、仕事と家庭を両立させながら家計を成り立たせる。その強かな女性像は現代にも通じて、これまでの、二人の男性の間で揺れ動く「クララ像」とは違い、とても新鮮です。
脆く繊細なロベルトを好演したパスカル・グレゴリー、10歳以上も年の違うクララに献身的な愛情を注ぐ青年を爽やかに演じたマリック・ジディともに素晴らしかったのだけれど、何といっても「マーサの幸せレシピ」で注目を集めたクララ役のマルティナ・ゲデックの存在感が素晴らしい。もともとピアノが弾けたようなのだけれど、改めてピアノを習い、クランクインの頃には小さな即興曲が弾けるまでになっていたという、役になりきろうとする努力の成果は見事なものでした。その彼女のお陰で、温かく優しく、そして生きることに強かな一人の女性が、見事に描き出されたと思います。
そしてラスト近くのクララに添い寝するヨハネスのセリフに、ヨハネスの叔父の子孫という脚本・監督のヘルマン・サンダース=ブラームスの、ヨハネスに対する深い思いが感じられ、心を打たれました。
それにしても、全編を通じて流れる音楽の演奏も素晴らしく、音楽映画としても第一級の出来だと思いました。

shikahiko