劇場公開日 2009年4月18日

「崩壊した家族の悲哀と結婚式の歓喜。 登場人物の呼吸さえ聞き取れそうな、生々しい家族のドラマ。」レイチェルの結婚 浮遊きびなごさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0崩壊した家族の悲哀と結婚式の歓喜。 登場人物の呼吸さえ聞き取れそうな、生々しい家族のドラマ。

2009年8月9日
鑑賞方法:映画館

泣ける

悲しい

幸せ

姉の結婚式に出席する為、施設から一時帰宅した主人公キム。
彼女が結婚式の客らと話しつつ自宅を歩き回る序盤のシーンから、映画には只ならぬ緊張感が漂っている。この娘はそのうち爆発して、結婚式から何から全てぶち壊しにしてしまのではないか——そんな緊張感が。

キムは昔犯した過ちを心底悔いている。自己を卑下し、生傷を進んで晒すような言動は、自分は罰せられて当然だという思いからだろう。だが同時に、許されたい、愛されたいとも願っていて、それがあの不安定な状態を生み出していると思しい。破滅的で痛々しいほどに繊細なキムを演じるアン・ハサウェイが絶品。

その他の人物造形も秀逸。結婚という幸せの絶頂で妹への愛憎を噴出させる姉。とうの昔に崩壊した家族をまとめようと躍起になる父親。そして、あの母親。少ない登場ながら、どうしてこの家族がここまで壊れてしまったかを十分に匂わせる。

手持ちカメラによる映像は、まるでこちらが招待客の1人として、見てはいけない場面を覗き見ているような生々しさ。

多民族の入り交じる、カラフルでパワフルな結婚式の風景も面白い。重く哀しいドラマの対比として、最後は爽やかな後味さえ残してくれる。

傑作です。

浮遊きびなご