「だから「ありがとう」です」スノープリンス 禁じられた恋のメロディ kerakutenさんの映画レビュー(感想・評価)
だから「ありがとう」です
あざとい演出で「泣かせよう」という映画は大嫌い。
の私ではありますが、
「和製フランダース」の時点で、
ネロ(草太)とパトラッシュ(チビ)は、最後、
天国に召されなきゃマズイんですよね。
いくら寒いとはいえ、「街中で凍え死ぬ」って
尋常じゃないですよね。
一晩のうちに、しかも毛並みふさふさの大型犬とともに
死ねるかぁ~?
でも、ラストの強引さをのぞいたら、
この映画、けっこう成功してるんじゃないかと思います。
草太とおじいさんは、ともかくバカがつくほどの純粋さなんです。
普通はね、周りにものすごく嫌な奴をいっぱい配して、
良い人は良い人でも「相対的に良い人」なんだけど、
この映画には、
怒りを感じるほど嫌な奴はでてこないんです
おじいさんの言葉が、これまた徹底した善人ぶりで・・・
「どんなに小さい嘘もいかん。
それは人を傷つける」
「どんなときも人をうらんだり
にくんだりしてはいかん」
草太が財布をスリに盗られてしまったときも
おじいさんはしっかり草太を抱きしめ、
「わしたちの金を
わしたち以上にほしい人がいるなら
くれてやろう」
早代の良心もクラスメートも
あえて「悪役」に描いてはいないのですが、
でもこの時代、どんなに才能があったって、良い奴だって、
「金持ち」と「貧乏人」の間には、
越えられない大きな溝があったのです。
今はもっともっと弱い人たちにやさしい社会です。
(もちろん、昔に比べて、ですが)
チビも草太も、子どもを産むとひきかえに
草太も犬のチビの母親も死んでしまいました。
これも昔は、珍しいことじゃなかったです。
森本クンの美少年ぶりはたしかにすごく浮いています。
思い切って坊主頭か、逆にホームレス風のぼさぼさ頭。
それで、服なんかすごいぼろで、青っ洟たらしてて・・・
なんて思ってしまうのですが、
でも、平成しかしらない子どもたちに伝えるためには、
主人公を「平成からタイムスリップしたいまどきの子」
にすることで、自然に共感できるようにしたのかもしれません。
この映画、泣いてすっきりしたい「泣き女」みたいなおばさんたちより、
今の子どもたちにぜひ観てほしいです。
私は子どものとき、「マッチ売りの少女」を読んで以来、
クリスマスで浮かれている時も、窓の外にいるかもしれない
薄倖の子どもたちの存在を感じていました。
そういうのって、親が説教したり、
学校の道徳の時間に学習するより、
自分から「気づく」ことが大事だと思います。
今はこんなに楽できて幸せな時代だけど、
昔の困難な時代にも同じように人は生きていて、
その人たちが頑張って生き抜いてくれたから、
私たちが生まれ、こうやって、映画をみたりできるんですから。
現代の場面でマイコもこういっていました。
「つらい時代を生き抜いてくれたから わたしがいる。
だから「ありがとう」です」
ベタといわれたらそうかもしれないけど、
オスカー作家小山薫堂さんから子どもたちへのメッセージが
たくさんつまった映画だと思いました。