「生きてるだけで。」大阪ハムレット ハチコさんの映画レビュー(感想・評価)
生きてるだけで。
名画座にて。
大阪人にハムレットを語らせたら、どんなもんだろか。と
原作者が思って書いたという話は確かにクセだらけで面白い。
雑多で纏まりがなく、やかましいうえに小賢しい雰囲気の街
ならではの活劇というか、ほんわかシビアな感じが鋭くて良い。
子供たちの名演も素晴らしいが、松坂慶子扮する母ちゃんの
デッカイお尻がプリン、プリンと商店街を歩く姿には、感動。。
このヒト昔はすんごい色っぱい恰好して(今でもお綺麗ですが)
「私は愛の水中花~♪」って歌っていたんだよなぁ…と遠い目。
この母親だから、子供達はああ育ったんだ…と素直に感じる。
死んだ父親(寛平)の弟だと名乗る変なおっちゃん(一徳)が
同居し始めた久保家の3人兄弟は、揃いも揃って似ていない。
異常に老け顔の長男。ケンカっ早い次男。女になりたい三男。
あとで、あぁ~この子たち、父親が…という事情が分かるが、
それにしてもしっかりと結束!しているところが可愛くてイイ。
家族揃って夕飯を食べ、揃いのTシャツを着て(まぁムリヤリ)
なんだかんだといっては寄り添っている姿に笑みがこぼれる。。
次男が突然「ハムレット」を辞書を片手に読み始めたことから、
この風変わりな家族の悩みがそれぞれ明るみに出始めるが…。
母ちゃん、おっちゃんの掘り下げ方も上手いが、
なんといっても子供達それぞれのキャラ分けがお見事だ。
どの子を選んでも共感でき、一緒に泣き笑いができる。
異常に老け顔でまだ中3なのに大学生と間違われる長男は、
初恋の教育実習生に「私の父親になって♪」とせがまれる^^;
まるで違和感がないおかげで、こちらまで苦笑いしてしまう。
ハムレットをハムスターと勘違いするほどおバカな次男は、
自分だけがまったく父親に似ていないことに危機を感じる。
ケンカ以外に取り柄のない彼が辞書を引く姿には感動する。
大好きなおばちゃんが亡くなったのを機に、ますます女子に
なりたい感を募らせる三男は、どう見ても女の子に見える。
あまりに可愛いので浴衣を着せたくなるのもすごく分かる^^;
漫画的といえば確かにそうだが、それぞれに味わいが深く、
おまけに父親が…となれば彼らの抱える問題はかなり深刻。
それでも、だ。
生きるべきか。死ぬべきか。なんて悩む暗さは微塵もない。
そんなことより生きるのに夢中で、食べるのに懸命だから、
彼らの夢追い合戦は、こちらの気持ちまで喚起させてくれる。
生きとったら、それでええやん。元気だったら、ええやんか。
そういえば明石家さんまの娘、いまるのことを
「生きてるだけで丸もうけ」と名付けた父親を最初は「?」と
思ったものだが、その意味を深~く考える今、
なんていい名前なんだろうと思えるから不思議である。
おおらかな気持ちで、劇場を後にできる極楽ドラマである。
(セクハラなんかなんのその。肝っ玉のデカさが違うんだな。)