劇場公開日 2009年6月13日

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「愛くるしいの一言です」マン・オン・ワイヤー あんゆ~るさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5愛くるしいの一言です

2010年5月12日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

悲しい

楽しい

怖い

2008年イギリス・アメリカ合作映画。95分。今年30本目の作品。前々から気になっていたドキュメンタリー映画です。

内容は;

1、フランス人綱渡り師フィリップ・プティ氏は世界中の高所を無許可で綱渡りするいわゆる国際的な「お尋ね者」。
2、そんな彼は1974年、子供のころからの夢だったNY世界貿易センターの綱渡り計画を立てる。
3、様々な困難を乗り越え彼は夢を実現し、そして大切なものを失う。

世界貿易センターをわたくしは1999年に訪れたことがあります。実は高い所は苦手で最上階からガラス越しに下を見下ろした時はめまいがしました。こんな建物を作った人はすごいと思ったものです。

しかし、世の中にはその上がいました。屋上に鉄製ロープを張って命綱もつけずに45分間もこの二つの巨塔の間を歩いていた人がいたのです。すごいという感情以前に理解できませんでした。

本作はフィリップ・プティ氏と協力者のインタビュー、実際の映像や写真を織り交ぜながら作られたドキュメンタリー映画。本編が進行すればするほどわたくしの理解度はさらにバラバラになっていくような展開でした。

しかし、本作のマジックはそんなプティ氏を観てて好きになってしまうことなのです。童心溢れる彼の瞳を観て嫌いになることなんてできません。彼は根っからの子供で、そして生粋のピエロなのだ。

常軌を逸してるからこそ彼にしか与えられない夢や希望のあった45分間。それは決まり事に縛られているわたしたちの胸をときめかせる以上に、ひょっとしたら逸脱したいという本質的な願望をくすぐるからなのかもしれません。

結果的に、彼はその夢を実現した見返りに大切なものを失った。なにかを得ればなにかを失う、という法則は偉業を成し遂げた彼にも容赦なく襲いかかった。だからこそ愛くるしい。

本編が終わったあと、胸をかきむしりたくなる感情に襲われました。

あんゆ~る