「私たち観客への挑戦的映画」変態ピエロ カサキショーさんの映画レビュー(感想・評価)
私たち観客への挑戦的映画
すごい挑戦的な映画。
ふつう監督は八割ぐらい作品を枠にはめて我々に提供し、
残りの二割ぐらいを
我々の感受性に委ねるというものだと思うのですが、
この作品はまるっきり逆です。
いや、それどころか
監督は全ての感想を我々に委ね、
様々な材料だけを意図的に提供しただけのように思いました。
主人公はピエール、愛称 「ピ」。
長髪の彼はTV局で会場を盛り上げる役割を担っている。
その彼は剃髪して、
崇拝する国民的歌手クロヴィス・コスタを誘拐する。
誘拐して連れて来た彼の部屋に拘束し、
そこでの彼との会話。
彼は、最初自分はコスタではないと言い張る。
その後、延々と続く彼との会話。
崇拝していた国民的歌手としての面影は無く、
威厳は地に落ちてくる。
そして、「ピ」にはもうひとつ父親との関係に問題があったようだ
彼は父親に依存し、独立したアイデェンティティが確立できていないようだ。
以上書いたような
様々な、断片的なシーンと
突然不可解な、彼が抹殺されては、再び蘇るシーンが
続くのです。
わざと我々観客の気をそらせ、脈絡の無い世界を
作り出しているようです。
事前にパンフレットで、
観客はこの映画にどう対応してよいのか、
エンドロールをただ呆然と眺めているだけだった、
という挑発的なコメントを読んでいなかったら、
私もきっとパンフのような状態になった事でしょう。
きっと、それを意図的に狙っている作品かもしれません。
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