コッポラの胡蝶の夢のレビュー・感想・評価
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蝶の夢ではなく、夢見る蝶
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この不思議なタイトルは「蝶になって空を舞う夢を見て目覚めたが、果たして自分が蝶の夢を見たのか、それとも蝶が自分の夢を見ているのか」という荘子が提唱した思想から付けられている。正しく主人公が見ている蝶の夢のような物語だ。雷にうたれた70代の男が驚異的な頭脳と若い肉体を手に入れるというファンタジックな要素に、人類の言語の起源という哲学的(思想的?)要素が混じる。全体的にセピアがかった画面は、自身の分身との対話場面ではブルー基調となり、色彩的に上品な落ち着きをみせる。若返った男が、再び人生を取り戻したとき、彼が求めるのは言語の起源を突き止めるという長年の野心と、失った愛を取り戻すこと・・・。しかし若返りには必ず代償がある。男は愛する女を守るため、野心を棄て愛も失う。そして再び、雷に打たれた”あの時間”に立ち返ると、それは正しく蝶の夢ではなく、夢見る蝶となる。主人公が迷い込むパラドックスは、人生の最後に求めた夢の中の夢。単なる娯楽作品を嫌うコッポラらしい、知的エンターテインメントだ。
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