わが教え子、ヒトラーのレビュー・感想・評価
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独裁者の鬱。
名画座にて。
あの「善き人のためのソナタ」のU・ミューエが主演と聞いて、
さぞ感動に満ちた歴史ドラマなのかと思いきや…なんとコメディ。
とはいえ、扱っているのがあのヒトラー…なので、かなりブラック。
こういうシチュエーションで、果たして笑っていいものなのか?と
首をかしげたくなる演出も多いが^^;意欲作であり、異色作かも。
ところでこのミューエ氏、2007年に惜しくも他界したのだそうだ。
私は前作と今作しか彼を観ていないが、こんな演技のできる人を
失ったことの方が、独裁者ヒトラーの鬱なんかよりずっと哀しい…
結果的にコメディとシリアスの綯い交ぜな感じが最後まで拭えず、
これは皮肉なのだ。と分かっていながら、どう捉えればいいのかと
観る者を悩ませる作品になってしまった。。
チャプリンの「独裁者」と決定的に違うのは、独裁者が弱い小人に
為り下がり、彼に同情を禁じえないような場を与えてしまったため、
ユダヤ人でありながら優位に立つ教授の方が、まるきり悪者扱い。
殺そうと思えば殺すこともできる立場にありながら、何度もそれを
見送っては独裁者を生かしてしまう彼が、何かおかしいぞと気付く
後半、ここで何かが起こりそうだぞ…(まぁ演説なんですが)という、
シチュエーションはよく似ているも、演説に説得力がないのが残念。
「独裁者」では、チャプリンが母親の実名を叫んで大演説をしている。
笑わせるだけ笑わせて皮肉ったあと、人生の歓びを高らかに謳う。
まぁ、それとは違う本作なのだから、比べるのもおかしな話だが^^;
ブラックな喜劇ほど、役者と監督と観る者を選ぶところが怖いのだ。
ただそうはいっても、やっぱりミューエの演技は上手い。
悩み苦しみながら決断に迷い、最後は笑顔で締めくくっている。
これが彼の遺作なの…?と思うとなんだか物哀しい気分になるが、
善き人の善き演技を最後に垣間見れただけでも、私は幸せ者だ。
どうでもいいが、ヒトラーにジャージを着せたのはさすが。
(強運の悪者がはびこるのは、ストレスや鬱に苛まれた結果なのか)
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