ラフマニノフ ある愛の調べのレビュー・感想・評価
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崩おれた者を支える力
うちの息子が、遠い街で勉学に燃え尽きて 心折れてしまった時、僕は会いに行って背中をさすってやった。
後日彼にチケット代を送って薦めたのがこのラフマニノフの「ピアノ協奏曲2番」のコンサートなのだ。
アシュケナージ指揮、辻井伸行のピアノ。
ラフマニノフは、
ロシアの陰鬱で茫洋とした曇り空と、その下に広がる雄大な大地を目に浮かばせてくれる。
そしてそこに土の匂いがする民謡旋律と、ゴージャスかつロマンチックなハーモニーアレンジを見事に融合させた作曲家、兼ピアニストだ。
ピアノ協奏曲1番の失敗によって鬱を発症した彼。そんな彼をじっと支えて見守り、医者を捜し、再起を見届けた親友と家族。
僕自身が大きな挫折や失敗で立ち上がれなくなった経験があるものだから、ラフマニノフを聴くと もう言葉にならない。
どれだけ励まされるかわからない。
映画的には「ミューズが必要」
人間関係は その人物に影響を及ぼすので、芸術家の場合 異性関係を念入りに詮索される
男性だと 相手はミューズ扱い(笑)
ラフマニノフの場合、ライラックの花束を匿名で送り続ける熱狂的ファンがいたりして、女性ファンの数は多かったが、その女性関係は極めて普通
登場した3人の女性のうち、1人は嫁
アンナは愛人説ありだが、革命家マリアンナ(モデルはマリエッタ・シャギニャン)はかなりの創作が…
ラフマニノフは文学、絵画等からもインスピレーションを受けていることは描かれていない
また彼は長身(2m近い)で巨大な手が有名なピアニストでもあり、彼に寄り添うスタンウェイの男により大柄な俳優を起用するのは、どうなのか?
最後は家族愛でまとめられてるが、凡庸
クラシックファン、ラフマニノフファンでもないのに これだけの齟齬が目につく
ラフマニノフの名を冠した映画でもあるので やりすぎには悪意も感じる
人の人生の裏を観るのは新しい発見が有る!
邦画で大ヒットした「のだめカンタービレ」をはじめ、「シャイン」「逢びき」などでも、ラフマニノフ作曲の音楽が使われている。音楽音痴の私はクラシック音楽に詳しくないのだが、映画では知らず知らずのうちに多くのクラシック音楽がテーマ曲として使用されている事が少なくない。もし貴方もクラッシック音楽に造詣が深く無いとしても、聴いてみるとこの曲がラフマニノフの作曲だったのかと、後であの映画、この映画でもと驚かれる程に彼の作曲した音楽も映画と共に生きている事に気付かされる事だろう。
この映画ではラフマニノフがロシアの貴族の家庭に生れ育ったのち、デンマークを経て40代半ばで渡米し、70歳を目前にして亡くなるまでの彼の後半生の殆んどが、コンサートピアニストとして仕事をする事になってしまった、その苦悩する彼の日々を描いている。
彼は良き演奏家であると同時に、良き作曲家でも有り続けていたいと願う、この2つの才能の両立が思うままに出来ずにアメリカでの生活を送るが、この彼の人生を観ると人生は選択の連続と、その結果の連続性に集約される事をつくづくと思い知る。
ラフマニノフはリストと並び作曲家であり、素晴らしい演奏技術をも誇る演奏家で有るために、彼らの作曲したピアノ曲は難易度が高いと言われている。
「天は二物を与えず」とは言われて来ている事だが、時として本当に彼らの様に作曲はもとより、演奏家の才能をも発揮する天才がいるが、凡人の私には只の我が儘な悩みとしか映らないが、常に亡命やピアノ教師との関係、女性関係と人生の選択に苦悩する彼。
世の大半の人々は1つの才能に恵まれる事を願い続けて日夜努力を惜しまず働き続けても、その生涯で才能を手にする事が出来ない。その素晴らしい才能を2つも得ているのだから!
彼は幸せな筈だ。逆に本人は才能も有り、名声も冨も得ているのに、その他に何を望むのかと友人達からも羨望の眼差しを受ける。才能が有るが故に才能の浪費をせずに、より多くの自分の内なる才能をより良いかたちで発揮したいと願う事は自然の流れで、人が生きる為に呼吸を無意識でするのが自然な営みであり続ける様に、才能の浪費をせずに、活かす事こそは、彼の自然の理に沿った生き様だったのだろうか?それだからこそ芸術家と言う職業人は逆に才能を活かしてゆく事が出来るのかも知れない。留まる事を知らずに、ただ只ひたすらに走り続ける人生を選ぶのが天才なのか?その自己の内面をストイックな迄に信じ続け突き進む事が可能な神経を持ち合わせている事が、天才の条件なのかもしれない。するとやはり天才にも、「ローマは一日にして成らず」と言う事なのかとも思う。
1918年にアメリカに亡命したラフマニノフは、NYのカーネギーホールからアメリカ全土を巡業し演奏興行を続けた。この時代は、丁度英国から渡米し、映画界で一躍人気を博していたチャールズ・チャップリンがハリウッドのラブレア通りに専属のスタジオを構えた年でもある。こののち時代は世界経済恐慌へと続き、世界大戦へと進んで行く歴史の中で、ついにラフマニノフは故郷の土を踏む事はなく亡くなるが、彼の心の中にいつも生き続けていた情熱は白いライラックの花に象徴される故郷への望郷以外の何物でも無かったようだ。その想いを支え続け、作曲へと向かわせた妻ナターシャの存在こそが彼を生かしていたのかも知れない。映画では、人の生涯の何処に焦点を当てて描くのかそこが分れ目だ!
思わせぶりな演出の割に内面がのぞけなかった・・・
ラフマニノフのことは、映画「シャイン」で知った。そのせいか、有名だし、いろいろな映画で使われている「ピアノ協奏曲第2番」より「第3番」の方が好きだ。すごくピアノが上手で、手が大きかったことくらいしか知らなかったので、興味深く観た。久々に観たロシア映画は、アメリカ映画とは違った落ち着いた雰囲気はあったが、何だか彼の上っ面を描いただけのような印象を持った。ライラックの花のエピソードはすてきだと思うが、亡命後はピアノの演奏に追われ、作曲に時間を割けなかった無念が今ひとつ伝わってこなかった。
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