ファーストフード・ネイションのレビュー・感想・評価
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ハンバーガーに見る、利益至上主義の縮図。でもやや単略的なところも
<ストーリー>
メキシコから違法に国境を越えて、仕事をしにきたシルビアたち。仕事にも付けて、しばらくは幸せな日々だったが・・・
一方ミッキーズ・バーガーのマーケティング部長のドンのチームは、今や主力商品になっている"ビッグワン"を生み出して、今年度も売上好調。ある日社長に呼ばれたドンは、肉パテを作っている工場の調査を命じられる。社長の友人が教授を務めている大学の学生が、肉パテを分析し、多量の糞便性大腸菌を検出したというのだ。
<個人的戯言>
ファーストフードのハンバーガーから見える、第三国から不法労働と、大企業の安全をも無視した利益至上主義という二つの側面を、セミ・ドキュメントのように見せる手法は、不法労働の方はより深刻に、利益至上主義の方はユーモアを絡め、交互にシーンを挿入しながら、飽きさせずに見せていきます。ただ個人的には、有名スターがノー・ギャラに近い形で出ていると思われる「利益至上主義」パートは、何だか米国のエクスキューズのようで若干鼻に付きます。事はそれほど単純ではないような・・・
全く関係のないように思える、メキシコ人の越境行為は、彼らが肉パテを作る工場で働くことで繋がります。更に安い労働力である第三国の不法労働者という面では、「利益至上主義」と繋がります。一方で、杜撰な安全管理で生み出す「利益至上主義」を、見て見ぬふりをしようとする大企業と、その仕事を請け負う関係会社。
この二つの側面を交互にセミドキュメントのように見せることで、不法労働者たちの劣悪な環境の深刻さと、それにより支えられる、更に問題を無視することにより生まれる、高利益を手にする企業への皮肉的ユーモアを対比させながら、二つの側面が一つの問題に繋がることを意識させ、それでいて飽きさせないことに成功していると思います。
特にどんどんその実態が明らかになるにつれ、厳しい状況に追い込まれるメキシコ人達のパートは、「そして、ひと粒のひかり」の女優さんも出ていますが(「そして・・・」での演技はアカデミー賞でもノミネートされました)、ほとんどが無名俳優たちで、それだけにその深刻さのみが率直に伝わってきます。
一方で、米国側から観たパートは、怒涛のように出演している有名スターたち。もちろんノー・ギャラに近い形なのでしょうが、これがこの映画の中で出てくる、学生たちの安っぽさと重なり、何か単なるエクスキューズに見えてしまいました。事はそんな簡単ではありません。もし安全性を高めたなら、メキシコ人はどうなるのか。ちょっと鼻につきます。伝えること自体の意義は認めますが。
ファーストフード無しの生活はありえないけど
かなりホットなテーマだと思うのに、公開劇場がほとんどない、というところに業界からの圧力がかかっていたのかなぁ…と思いつつ、面白そうな映画にかわりがないので、「ファーストフード・ネイション」を鑑賞。
とは言いつつ、実はどういう映画なのかほとんど知らなかったから、「スーパーサイズ・ミー」のようなドキュメンタリーだと思い込んでました。ちゃんと原作のあるフィクション映画だったんですね。
徹底した商業主義に走る企業を中心に、違法移民問題や食品衛生問題を巧みに織り交ぜながらストーリーは進行。衛生管理については、つい最近起こった餃子の問題なんかが最たる例だと思うけど、いつどこでどういう管理がされているか消費者には見えないから、一度信用ができなくなったら本当に怖い。怖いけども、だけどファーストフードなしでは至極不便な生活を送っている自分を振り返ると、まずは自分の食生活を改めるところからスタートしなきゃなぁ…という部分への問題提起につながる作品でした。
途中で挿入される食肉牛の話は、そもそも肉という食べ物を受け入れる人が多数いる限り、どうしようもないでしょう。最後の屠畜のシーンは…、これも現実だと思いながらも目を背けたくなりましたが。
もうちょっとリンクレイター監督らしいユーモアのある内容を想像してましたが、原作があるからかかなりストレートなお話でした。考えさせられる部分も多いけど、結構普通の映画だったのがちと残念。ま、刺激的な話にすれば良いってもんでもないし、監督もそのバランスを考えてのさじ加減だったのかもしれないけど。
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