劇場公開日 2008年2月16日

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「ハンバーガーに見る、利益至上主義の縮図。でもやや単略的なところも」ファーストフード・ネイション ジョルジュ・トーニオさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0ハンバーガーに見る、利益至上主義の縮図。でもやや単略的なところも

<ストーリー>
メキシコから違法に国境を越えて、仕事をしにきたシルビアたち。仕事にも付けて、しばらくは幸せな日々だったが・・・

一方ミッキーズ・バーガーのマーケティング部長のドンのチームは、今や主力商品になっている"ビッグワン"を生み出して、今年度も売上好調。ある日社長に呼ばれたドンは、肉パテを作っている工場の調査を命じられる。社長の友人が教授を務めている大学の学生が、肉パテを分析し、多量の糞便性大腸菌を検出したというのだ。

<個人的戯言>
ファーストフードのハンバーガーから見える、第三国から不法労働と、大企業の安全をも無視した利益至上主義という二つの側面を、セミ・ドキュメントのように見せる手法は、不法労働の方はより深刻に、利益至上主義の方はユーモアを絡め、交互にシーンを挿入しながら、飽きさせずに見せていきます。ただ個人的には、有名スターがノー・ギャラに近い形で出ていると思われる「利益至上主義」パートは、何だか米国のエクスキューズのようで若干鼻に付きます。事はそれほど単純ではないような・・・

全く関係のないように思える、メキシコ人の越境行為は、彼らが肉パテを作る工場で働くことで繋がります。更に安い労働力である第三国の不法労働者という面では、「利益至上主義」と繋がります。一方で、杜撰な安全管理で生み出す「利益至上主義」を、見て見ぬふりをしようとする大企業と、その仕事を請け負う関係会社。

この二つの側面を交互にセミドキュメントのように見せることで、不法労働者たちの劣悪な環境の深刻さと、それにより支えられる、更に問題を無視することにより生まれる、高利益を手にする企業への皮肉的ユーモアを対比させながら、二つの側面が一つの問題に繋がることを意識させ、それでいて飽きさせないことに成功していると思います。

特にどんどんその実態が明らかになるにつれ、厳しい状況に追い込まれるメキシコ人達のパートは、「そして、ひと粒のひかり」の女優さんも出ていますが(「そして・・・」での演技はアカデミー賞でもノミネートされました)、ほとんどが無名俳優たちで、それだけにその深刻さのみが率直に伝わってきます。

一方で、米国側から観たパートは、怒涛のように出演している有名スターたち。もちろんノー・ギャラに近い形なのでしょうが、これがこの映画の中で出てくる、学生たちの安っぽさと重なり、何か単なるエクスキューズに見えてしまいました。事はそんな簡単ではありません。もし安全性を高めたなら、メキシコ人はどうなるのか。ちょっと鼻につきます。伝えること自体の意義は認めますが。

ジョルジュ・トーニオ