「唯一無二の特命係」相棒 劇場版 絶体絶命!42.195km 東京ビッグシティマラソン 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
唯一無二の特命係
2008年GWに公開された『相棒』の劇場版第1作目。
この年のGWは不作で本作も当初はさほど期待されていなかったが(興行10億円~15億円いけば万々歳)、蓋を開けてみれば44億円超えの予想を大きく上回る大ヒット。元々TVシリーズで人気あったが、映画でも“『相棒』=ヒットコンテンツ”を確立し、ブランド力を一層高めた記念碑的作品と言えよう。
当時『相棒』を見ていなかった私。設定などを何となく知っていた程度。
たまたま試写会が当たり観に行き、私にとっては本作が“初『相棒』”。
これが面白かった。以来TVシリーズも見るようになり、今に至る。
劇場版でも本作が一番のお気に入り。何度も見ている。
では、何故今頃になって再見し、レビューも書いたか…?
間もなく始まるseason21で、本作に登場する人物のサプライズがあったから。
その発表があったのは6月の事でその時レビューしても良かったのだが、直前の今まで待っていた。
言わずもがな、
前seasonで卒業した冠城=反町隆史。歴代最長相棒を努め、個人的にも初代に継ぐ相棒だっただけに残念。
5代目相棒は誰か…?
あれこれキャスティングの噂が飛び交う中発表されたのは、“5代目”ではなかった。
だってまさかまさかの…
亀山薫=寺脇康文のカムバック!!
2008年のseason7半ばで卒業した初代相棒が、14年ぶりに帰って来る!
暫くその事ばかり考えてたくらい、興奮した!
後任相棒たちも各々魅力あったけど、やっぱり何だかんだ言って、薫ちゃん!
元々『相棒』は、寺脇が敬愛する水谷豊との共演を果たす為にスタート。降板理由も水谷との不仲説や水谷から更なる役者としての飛躍を推進されてなど、色々あって、それらを経て、再びーーー。
薫ちゃんが帰って来る!
ハァ…、放送が待ち遠しい…。
と言う事で、気分を盛り上げる為に本作を再見。
やっぱり一番しっくり来るね。
静の右京と動の薫。
右京が犯人からのチェス見立て勝負に頭を使い、薫がマラソンの中走り回る。
犯人のアジトの爆破に巻き込まれた右京。助けに向かう薫。
右京の手を薫の手が掴み、引き上げ、その際にテーマ曲のアレンジverが流れる。個人的に本作のハイライトの一つと思っている。
息のあった連携プレーやコンビネーション、絆は、立場や歳の差を超えた“相棒”。
話もこれぞTHE『相棒』。
SNS上の処刑リストから標的にされた著名人の猟奇殺人事件が続く。
標的の場は東京ビッグシティマラソンにあるとされ…。
大勢のランナー走る中、犯人と爆弾探し。シティマラソンを絡めたスケール性は劇場版ならでは。
捜査と推理を深めていく内に、数年前に起きた邦人人質殺害事件が関係している事を突き止める。
遂に逮捕された犯人の悲しき復讐理由。政府の隠蔽と“Sファイル”とは…?
本作の数年前に起き、賛否吹き荒れた邦人人質事件をまじまじと思い返される。
責任は本人にあるのか、国にあるのか…?
“報道”だけを見てバッシングしか出来ない我々国民も同罪なのか…?
どんな理由であれ、最悪の事態になってしまったら取り返しは付かない。
劇中では退避勧告が出ていたのにも関わらず、それを無視して残り続けた青年へバッシング。殺されたのも自業自得。が、実際は現地の混乱で勧告は届いておらず、知らなかった。時の総理や政府はこれを“Sファイル”として隠蔽。それまで加熱していたバッシング報道もピタッと止まり…。そんな事件忘れたか、そもそも無かったかのように…。
遺族がそれを知ってしまったら…? ただ黙っているなんて出来ない。西田敏行の悲演が胸を打つ。
ちと過剰に描かれ過ぎな気もする。『相棒 劇場版』は『Ⅲ』のように過剰になり過ぎる時もある。
西田演じる犯人も悲劇の遺族ではあるが、恐ろしい知能犯でやり口はサイコパス。
粗い点やご都合展開、あのクセで犯人が一発で分かっちゃう難点も目立つものの、
警察組織の腐敗や不正、時には国の陰謀にも真っ直ぐな信念と正義で立ち向かっていく特命係の姿には、興奮と感動を感じる。
『相棒』が訴え描く、社会派エンタメ!
久し振りに見ると、たまき=高樹沙耶は諸事情で降板し、三浦や米沢も卒業し、小野田官房長は殉職し、津川雅彦も実際に鬼籍に入った。
改めて、22年の歴史の長さを感じる。
シリーズを去った者、レギュラーメンバー、そしてファン…。
皆の思いと期待に応え、
右京と薫の“ベスト・オブ・相棒”が、いよいよ…!