「ジョンはやっぱり・・・」PEACE BED アメリカVSジョン・レノン jack0001さんの映画レビュー(感想・評価)
ジョンはやっぱり・・・
人が生活する上で、規模の大小にかかわらずコミュニティは存在する。国家、地域、名も知らぬ町の一角で、必ずやそこでのルールやしきたりはつきもの。その場所に移り住んだ新参者への解答は、迎え入れられるか?村八分にされるか?だ。
アメリカ合衆国は自由の国と言われている。おそらく多くの人々が一度は耳にしただろう。あくまでもそれは管理下における自由だ。
暗黙の了解で決定され縄張りを持っている。格差と辺境の存在するその国へ、20世紀最大のROCK BAND「ザ・ビートルズ」の中枢を担った男が舞い降りた。
ジョン・レノン:John Lennon
人種差別と宗教観の肥大化著しいアメリカ人民へ、ベトナム戦争の有り方に右往左往するアメリカ国家へ、この映画は巨大なコミュニティに立ち向かったミュージシャンの知られざるドキュメントである。
「対アメリカ」などと映画タイトルは少々大げさに見えるかもしれない。だがこれがそうでもないのだ。たった一人のミュージシャンの言い分と影響力に大国アメリカが恐れを抱いた事実を、当事者たちのインタヴュに基づき編成されていく。
時の大統領、ニクソンが本気でFBIを使い、ジョンを監視し盗聴をし、国外退去を望んだという・・・まるでスパイ小説のような出来事だ。
*それにしてもリチャード・ニクソン:Richard Milhous Nixonという男、相当のビビりやだったに違いない。ウォーターゲート事件などはその典型。ジョンによるベトナム反戦活動さえも脅威に思えたようだ。
ジョン・レノンと言えば「愛」をメッセージに託した平和主義者という印象を持つことだろう。決して間違いではないが、ややニュアンスが違う。実は、常に戦う人だった。闘争本能を剥き出しにした人だった。まさかビートルズ時代には、到底そこまでの意思の堅固さなど本人も想像し得なかったはず。やがてオノ・ヨーコとの出会いにより、根底にあった本能が目覚めたに違いない。彼女のアバンギャルドな仕事や考えに惚れたのだ。そんな2人のイメージは愛情の表し方で打ち消されていただけだ。不均衡さを自然に調和させるというのがジョン&ヨーコの魅力であり戦略だった。
この映画の主旨は簡潔に「ジョンの闘争本能」ということだけだと思う。
親の愛情に恵まれず、不良と呼ばれ、望んでもいなかったアイドル時代へと突入する。来る日も来る日も不本意の連続だったに違いない。そんな彼の精神を救い続けた「音楽」の絶対値は、若い世代の心をも掴み先導していったのだ。
この映画を観て思ったのは、やることなすこと(インタヴュアとのやり取りも含めて)どんな角度から見ても
ジョン・レノンは、根っからのROCKERである。
ということだけだ。
同じ匂いは、ボブ・ディラン:Bob Dylanからも感じた。
それは最も強烈なメッセージだ!
ビートルズなどどうでもいいがジョン・レノンの意志が好きだという人なら、感覚的に理解できる映画だろう。あるいは平和や環境について何か思うところがある人(特にボランティア活動をしている人)なら、是非思い知ってほしいのだ。同士が協力し合うのは良いことだ。それそのものについて別に反感はない。しかし、あなたの根底で常に反勢力とも戦う意思がなければ、それはナアナアで中途半端な行為だ!
志を持つというのは、大衆の中にいても、常に孤独な自分を見据えること
この意味を理解出来ぬ者は、今すぐにボランティアなど止めたほうがいい。そんなに世界は甘くない!何となく分かるという者の為に、世界の閂(かんぬき)が少しだけ緩んでくれるはずだ!