「奇跡のオープンチューニング♪」奇跡のシンフォニー kossyさんの映画レビュー(感想・評価)
奇跡のオープンチューニング♪
両親を知らずに施設で育った少年が・・・などと、ベタでどうしようもないストーリーに加え、全てが奇跡で突拍子もない展開。だけど、好きにならずにはいられない音楽映画なのです。仮に音楽を抜いてしまったら5点満点で2点くらいになるかもしれない。
冒頭から麦畑の中で自然界の音楽を堪能する少年エヴァン(フレディ・ハイモア)。周りの少年たちからは“freak”だといじめられる。常に音楽が聴こえているほど自然音楽フリークなのです。施設の劣悪な環境なんかは描かれないものの、音楽教育を全く受けていないことがわかるだけで十分だ。そして映画は、11年前の母親ライラ(ケリー・ラッセル)と父親ルイス(ジョナサン・リス=マイヤーズ)の一夜の恋と交互に描かれてゆく・・・
路上でギターを弾く少年アーサー(レオン・トマス三世)に出会い、そうした孤児を食いものにしている胡散臭い元ミュージシャンのウィザード(ロビン・ウィリアムズ)に拾われ、ギターに出会う。なにしろ楽器には触れたことがないらしく、福祉事務所のジェフリーズ(テレンス・ハワード)の口笛にも興味を持ったくらい。そんなエヴァン少年はいきなりギブソンのアコギ(名前はロキシー)のチューニングを変える。
いきなりギターが弾けるわけないやろ!と予告編では意味不明だったのですが、本編を観て納得。スケール練習もピッキング練習も要らない、タッピング奏法。ハンマリングオン、プリングオフ、ライトハンド奏法、トリル等々・・・しかもノーマル・チューニングではないのだから(多分オープンDに完全4度を加えたチューニング)、素人にも出来そうなのだ。まぁ、普通の人なら出鱈目な曲になるんだろうけど、なにしろ両親が天才的チェリストとロックミュージシャンの天才遺伝子を受け継いでるんだから・・・
しかもギターだけではない。ちょっと音階を習っただけでパイプオルガンを弾き出すし、11歳にしてジュリアード音楽院に入学して、いきなりシンフォニーを作曲してしまうのだ。あまりの天才ぶりにちょっと笑ってしまいました。こうなってくると真面目に努力している若き音楽家たちがバカらしくなって投げだすかもしれないけど、エンドクレジットにフレディ君の名前がないことから、彼の楽器だけが全て別人なんだし、指揮がぎこちなかったことが救いです。でも、TVの「全力!Tunes」なんかを見てるとヤル気を無くします・・・
セントラルパークのクライマックスシーンは端折った感がありましたけど、その前のルイスとのセッションで十分泣いたので、涙を乾かすにはちょうど良かった。