クリスマス・キャロル(1938)のレビュー・感想・評価

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4.0【ケチで笑顔無き不寛容な老人、スクルージがクリスマス・イヴの夜に現れた過去、現在、未来の妖精に出会い、純粋な心を持つ少年の自分の姿と未来の哀れな姿を見て、真人間に戻る物語。多幸感溢れる作品でもある。】

2024年7月24日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

悲しい

知的

幸せ

■内容は巷間に流布しているが、簡単に。
 あるクリスマス・イブの日。不寛容でケチで意地悪なスクルージ老人(レジナルド・オーウェン)は、従業員のボブ(ジーン・ロックハート)が些細なミスをした事で馘首し、甥のフレッド(バリー・マッケイ)がクリスマスの挨拶に行っても、不機嫌に追い返す。
 だが、その夜、3人の過去、現在、未来の妖精が、けちで意地悪な老人・スクルージを時間旅行に連れ出す。
 純粋な少年時代、心の狭い老いぼれの現在、哀れな最期を迎える未来を知ったスクルージは衝撃を受け、人を思いやることの大切さを悟った彼はある行動に出るのである。

◆感想

・スクルージ老人を演じた名優レジナルド・オーウェンの、序盤の苦虫を嚙み潰したような顔からの、純粋な少年時代、心の狭い老いぼれの現在、哀れな最期を迎える未来を知った後に”改心”し、笑顔で人々に接する表情と、身体の変化が素晴しい。

・特に、過去の美しい妖精に導かれて見た少年時代の純粋な自分の姿に驚き、未来の陰鬱な妖精に連れていかれて見た、悲惨な人生を歩んだ男の最期の姿を見るシーンは、モノクロの効果もあり、とても良い。

<そして、スクルージは元々自分に備わっていた善性を取り戻し、ボブの家に行き詫び、給料を上げるからと笑顔で言い、フレッドにも人が変わったように接するのである。
 今作は、慈善、慈愛、寛容、博愛の心を持つ大切さを描いた作品なのである。>

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NOBU

3.0クリスマスは「寛容の季節」

2024年7月6日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

<映画のことば>
誰もが幸せにならんとな。

作品自体についての私のレビューは、同名別作品(2009年/ロバート・ゼメキス監督)に対するレビューと基本的に同じなので、基本的に、そちらに譲ることとして、ここでは、本作に固有のレビューにとどめたいと思います。

もちろん、原作が同じなわけですから、「かつての共同経営者マーレイの導きで、強欲の高利貸し・スクルージの前に過去・現在・未来の三人の精霊が現れる」という作品としての基本的な組み立ては同じくなのですけれども。
本作の方が、より「クリスマスを祝うべき(本来の)意味」ということでは、描写がよりストレートで、いわば「直球勝負」だったと思います。
評論子は。

「クリスマスを祝うべき本当の意味」…それは、評論子が本作から受け止めたところでは、年に一度は人を赦すということだったのではないでしょうか。

人間は、生きていれば他者との軋轢は避けることができませんが、さりとて、その軋轢を永遠に保持するのでは人間関係がギスギスすることでしょうし、何より、そういう「重荷」を内に抱えている自分が、遂には疲れ切ってしまうようにも思います。
(人を呪わば穴二つという言葉もあるとおり)
「寛容の季節」として、一年に一度その時期が(イエス・キリストの生誕になぞらえて)クリスマスなのかも知れません。

物語としては「絵に描いたようなハッピー・エンド」で、それ以上は何も言うこと、言えることはないのですけれども。
そのシーンに浸りながら、そんなことを想えた一本になりました。
評論子には。

佳作としての評価としておきたいと思います。

<映画のことば>
「失礼ですが、どちら様で?」
「叔父のスクルージだ。
笑顔だから見違えたのか?」

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talkie

5.0クリスマスの奇跡

2023年12月24日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:VOD

楽しい

知的

幸せ

クリスマス映画の金字塔
何度もリメイクされた不朽の名作

1938年の作品
昭和13年
ヒットラーユーゲントが来日した年
北原白秋作詞「独逸青少年歓迎の歌」を思い出す
ボブの息子はプティングに万歳なのに白秋ときたら「火虎万歳」「万歳納粹」なので困ったものである
スクルージじゃなくてもクビにされておかしくない

あらすじ
気難しい守銭奴で誰からも嫌われている実業家スクルージ爺さん
クリスマスの前日7年前に亡くなった共同経営者ジェイコムの幽霊がスクルージの前に現れ忠告してきた
スクルージは3人の精霊によって過去現在未来を見せられ諭されることによって改心していく

1人目の精霊は若い美女で少年時代丁稚時代のスクルージ担当
2人目の精霊はビッケのパパみたいに見事な髭を生やした膨よかなオッサンで現在を担当しスクルージと一緒に窓から他人の家の中を観察
3人目の精霊は黒装束の死神のような者で葬儀に弔問客が来ない孤独なスクルージの未来を担当

前半のスクルージの偏屈ぶりが笑える
「good afternoon」を「帰れ」とか「失せろ」と訳したのは秀逸
時折「ハンバーグ」と聞こえるがスピードワゴンのツッコミのギャグを先取りしたわけではなく実際は「Bah humbug」と言っている
意味としては「くだらない」らしいが昔の作品だけあって最近は使わない死語のようだ

年寄りが変われるかよという意見はあるがだってどっからどう見てもファンタジーだし
池袋の上級国民だって精霊に諭されたらきっと改心するさ
この作品の良さがわからないようではそれこそ老害ですよ
クリスチャンか宗教心が薄いかでだいぶ感想が変わってくるかも
アメリカ人は大多数がクリスチャンだし
僕は無神論者だけど精神年齢が低いせいか感動した

人間は変わると最初のうちは「頭がおかしくなった」などと笑われるけど世の中そんなもん
今までこれでやって来たんだからやり方は変えないと意地を張る男のメンツの塊は高齢者だけでなく現役世代の年下にもわりといる
柔軟に生きたいもんだね

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野川新栄

3.0人は生まれ変われるだろうか?

2023年12月7日
PCから投稿

単純

イギリス文学の古典(といっても19世紀の作品だが)を映画化した作品です。1938年の作品なので、今とは撮影技術が全く異なります。マーレイの幽霊が出てくるシーンなどは、安っぽい感じも否めません。それでも、最後まで見続けることができたのは、69分という作品の短さも一因でしょう。

ストーリーはシンプルです。強欲なスクルージがクリスマスの日に夢を見て、その夢をきっかけにして善人になって生きていく、そんな話です。作品中でスクルージが何歳の設定になっているかはわかりませんが、後期高齢者あたりでしょう。作品は善人になった彼を周りの人たちも受け入れてハッピーエンドで終わるのですが、私はそんなに単純には消化できませんでした。人格形成がすでに終わった人が、そこから価値観を180度転換させることはあり得るでしょうか?

暴力団員だった人が牧師になり、今は更生指導しているような話をきくことがあります。蓋を開けると、そういう役割を隠れ蓑にして、相変わらず悪いことをやっているケースも少なくないようです。数年前に、池袋で老人が運転する車が母娘をはねて死亡させる事件が起きました。人を死なせるという行為に直面しても、自分の非を認めない人もいるのです。

自分も80過ぎたらそうなるかも知れません。そこで変わることはそれまでの自分を否定する部分があると思いますが、年を重ねるとなかなかできなくなるものです。だから「老害」なんて言われるのでしょうけれど。まだ、価値観を修正できるうちに、自分の理想や倫理観を再確認するのに、少し役に立つ作品だと思います。

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ねりまっくま