「他人に理解を求めない唯一の恋愛映画」やさしくキスをして Gustav (グスタフ)さんの映画レビュー(感想・評価)
他人に理解を求めない唯一の恋愛映画
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スコットランドのグラスゴーに住むパキスタン人の男性とアイルランド白人女性の、宗教・文化・生活習慣の障害を乗り越えようとする恋愛映画。恋の駆け引きと問題点の追求が、現実の厳しさを醸し出している。二人の繋がりがセックス以外描かれていない潔さが今日的で面白かった。また通常のラブロマンスのヒロインにあるべき理想の女性像が描かれていないのもユニーク。何故男性が家族の絆を犠牲にしてまで女性に惚れ込むのか、他者が理解に苦しむ程に魅力がない。女性の良さを知る男が映画の中で彼ひとり、また観る者にも要求しないスタイルは、ある意味リアリズム表現の限界を超えた。
自分勝手で我儘な女性とそんな白人女性の虜になったパキスタン男性の苦悩描くケン・ローチ監督の演出が、終始一貫して冷静に社会に潜む問題点を掘り起こしていく。男性の姉が、女性を家の前まで案内して、庭に安らぐパキスタン家族を見せるシークエンスが印象的。ラストは、ハッピーエンドの安易な決着をせず、ふたりの前途多難を暗示して終わる。本来ドキュメンタリーで扱うテーマを敢えて劇映画にした、脚本家ラヴァティとローチ監督の作家姿勢には感服する。
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