「ほんわか見られるが、なかなか骨太」大統領の理髪師 sow_miyaさんの映画レビュー(感想・評価)
ほんわか見られるが、なかなか骨太
「ソウルの春」「南山の部長たち」と同様に、今作も朴正煕大統領暗殺に関わる作品。
コメディタッチに描かれているフィクションだが、前視聴の2作によって予備知識ができていたおかげで、史実に基づいたエピソードに支えられてつくられた作品だということがよくわかった。
でも、今作がいいのは、なにより視線が市井の人々からのものであること。
まず、軍事政権下でも、国が「韓国は民主国家だ」と言えば、そうなんだと思い込める素直さだったり、我が街に大統領官邸があることを理由に、その時々の大統領に対して疑いなく敬愛の念を持てる人々の素朴さだったりが、決して批判や馬鹿にした態度ではなく、寅さん映画のような温かみをもって描かれているところが好印象。
もちろん、朴正煕をモチーフにした大統領に「学識のあるやつは嫌いだ」という発言をさせたり、下痢に関わるエピソードの場面で、権力で「知」を捻じ曲げる描写があったりと、ちゃんと権力者が陥る毒も描いている。
それに、劇中のソン・ガンホが、だんだんと様々な出来事から学んでいき、最終的にあの発言を大統領に向かってする姿は、真の民主化へと向かおうとする当時の韓国の人々の変化の象徴として描かれているんだろうなと思った。
他にも、陽気だった従業員が、ベトナム戦争に派遣され無口になって戻ってくるところとか、さらりと日本語のセリフが出てくるところとか、色々と考えるきっかけになることも盛りだくさんだが、ニノに似てるナガンがとにかくいい味を出していて、とにかくほんわかと観られた。
あと、ムン・ソリが、ペパーミントキャンディの時のような可憐さと、ザ韓国という雰囲気のおばちゃんと両方を見事に演じて分けていたのはさすが。
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