「酷い映画を観た時に「地雷を踏む」などと面白い表現があるけれど、この映画は「核弾頭を踏む」くらいの気持ちで観ないと駄目かもしれない。」世界でいちばん不運で幸せな私 kossyさんの映画レビュー(感想・評価)
酷い映画を観た時に「地雷を踏む」などと面白い表現があるけれど、この映画は「核弾頭を踏む」くらいの気持ちで観ないと駄目かもしれない。
映像、カメラワーク、編集、俳優の演技は平均点以上。監督のセンスは凄いものがあると感じたが、内容はとんでもない実験的ストーリーであり、ジュリアンとソフィーが繰り広げる無茶苦茶な交換イタズラには呆れかえってしまった。前半では、こどもらしく、憎めないようなイタズラもあるのだが、ゲームのスタートが運転手のいないバスを動かすというもので、いきなり観客に「このまま観るか?観ないか?」とケンカを売っているような気がしたのだ。上映開始後5分でこの挑発である・・・ここで帰っては金をドブに捨てるようなものだ。この二人を殴りつけたくなる衝動を押さえながら(そう、前半では拳を握っていたと思う)、ガマンして鑑賞したのだ。
大人になってからのゲームは他人に迷惑をかけることもなく、彼らの普通の愛憎劇のような気もした。ソフィー以外の女をナンパ、ジュリアン以外の男と寝る、このあたりは許そう。「人様に迷惑だけはかけるんじゃないよ」というおばあちゃんの遺言が聴こえなくなる部分でもあるのだ(どこのおばあちゃんだ?)。ただし、ジュリアンの車のトランクにあった死体?首吊り?ここだけが意味不明だった。
こうして、良識という踏絵が映画館の客席の下に置かれ、二人の恋愛ゲームだけを楽しめるとしたら、犯罪までをも容認してしまうことになりそうな心理テスト映画。あのままコンクリートで固められなければ、恋愛ゲームはさらにエスカレートして、高層ビルの一つでも爆破してしまいそうな勢いだった。正直言って、ラストはホッとした。
素直な感想としては批判的な観点なのだけど、もしかすると、これが全て反面教師の映画なのかもしれないと感じたし、“周りの人を幸せにする”内容の『アメリ』と対極をなすかのごとく“周りの人を不愉快にする”実験的映画にチャレンジしたととらえれば、すごいことだとも思った・・・これは有り得ないか・・・
【2005年12月映画館にて】