「映像の美しさ、登場人物の心の機微が素晴らしい」かげろう(2003) kakerikoさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0映像の美しさ、登場人物の心の機微が素晴らしい

2014年10月6日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

悲しい

難しい

エマニュエル・ベアールがただ妖艶なだけでなく、戦争未亡人で子供2人を守りながら母として(父としても)重圧に耐えうるけなげな女性を力演しています。彼女達はドイツ軍の爆撃から逃げる最中に、偶然助けられた17歳の青年と森深い空屋敷で、生き抜く為の共同生活をしていくことになります。最初こそ警戒心、猜疑心やわだかまりで大変な日々だったのですが、次第に彼に心を寄せ、気づけば鎧を脱いで女としても安らぎを求めるようになるのですが・・幾重にも畳み込まれた感情を持つ女性というこの複雑な生き物を今作品はまざまざとみせつけてくれます。
また、相手役の ギャスパー・ウリエルも引けを取らないほどに素晴らしい演技です。未熟で、激しさと繊細さを持つアンバランスな若者の姿が、観る人の胸が痛々しくなるほど。
原題「LES EGARES 」は“道を踏み外した人”とか“迷い人”という意味だそうで、この邦題は巧いと思いました。偶然の訪問者と戦争の終結と共に、この切り取られた楽園のような生活は終わりを迎えます。とても深い余韻を残す作品です。

sonje