「ヴィクトリア朝の詩人とそれを追う研究者たちの愛が交錯する知的ラブストーリー」抱擁(2002) ぐうたらさんの映画レビュー(感想・評価)
ヴィクトリア朝の詩人とそれを追う研究者たちの愛が交錯する知的ラブストーリー
ブッカー賞を受賞したA・S・バイアットによるベストセラー小説を、スタジオが映画化権を獲得して12年の月日を経て映画化。本来なら英国人であったはずの研究者の男性をアメリカ人に置き換えてヒロイン(こちらは英国人)との分かりやすい化学変化を呼び込むなど、原作を愛する人にとっては受け入れがたい脚色もある。だが、ヴィクトリア朝時代の詩人たちの愛と、その軌跡を追う研究者の男女がやがて詩人たちと同じ結びつきを強めていく様は幻想的でもあり、そして美しい。何よりも英国はヨークシャーの東海岸に位置する港町ウィットビー(ここはブラム・ストーカーが「ドラキュラ」を書いた地でもあり、クック船長がエンデバー号を指揮して冒険へ旅立った港である)が男女の愛を成就させる不思議な魅力を放つ様に惹かれる人は多いだろう。米国人監督やキャストを擁しながらも、大英博物館やロンドン図書館など実際の場所を用いたロケ撮影が臨場感を誘う。
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