劇場公開日 2002年8月3日

「暴力は暴力で叩きのめす」パワーパフ ガールズ ムービー 因果さんの映画レビュー(感想・評価)

4.5暴力は暴力で叩きのめす

2024年9月30日
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パワーパフガールズとモジョ・ジョジョの確執の原因が明かされるエピソード0的立ち位置の作品。作品の舞台となるタウンズヴィルはポップなゴッサムシティといった雰囲気の無法地帯で、街全体に暴力至上主義が蔓延している。

そんな現状を打破することになるのが郊外に居を構えるユートニウム博士だ。お砂糖〜スパイス〜のくだりで有名な化学実験を行なったところ、強くてキュートな3人の女の子、ブロッサム、バブルス、バターカップが生まれたという次第。

本作では生まれつき超能力を有した3人が「普通の日常生活」に馴染んでいくまでの過程が描かれる。幼稚園の鬼ごっこ遊びがエスカレートして街中を破壊するくだりは何ともカートゥーンアニメ的な外連味に溢れていて清々しい。

こういう派手なアクションシーンをヌルッとした(フレーム数に変化がない)感じで描写するのはカートゥーンの特徴だなと思う。日本のアニメだと意図的に中割りを減らして動きに極端な緩急をつけることのほうが多い。

ユートニウム博士の実験の余波で超頭脳を手に入れてしまったチンパンジー、モジョ・ジョジョが言葉巧みにガールズを籠絡して自分のアジトを作らせるくだりもよかった。ここまでしちゃったら流石にガールズは重罪人すぎるだろ…という気もするがカートゥーンなので無問題。

猿軍団とガールズの最終決戦はカートゥーンの誇張表現とCGアニメがうまいこと折衷しており視覚的快楽があった。同時期の日本アニメがリアル作画とCGの接合に難儀している一方で、これはなかなかの快挙だったんじゃないかと思う。猿たちのデザインがそれぞれ異なっているあたりのギミック性もよかった。

それにしても「暴力を抑制できるのはより強い暴力だけである」と言わんばかりのガールズたちの容赦なさは実にアメリカ的で恐ろしい。「天才博士が生み出したスーパーヒーロー」と「メカトロニクスに長けた超知能猿軍団」という対立軸にアメリカ人vsアジア人…みたいな寓意を読み取ってしまうと大変なことになりそうだ。

しかしまあ結局誰が本作最大の罪人かといえば間違いなくユートニウム博士ではある。一度は「もう何も信じられない」と見限ったガールズたちの活躍で運良く死罪を免れられてホントによかったね。

因果