忘れられた人々のレビュー・感想・評価
全2件を表示
忘れられた人々=私たちがみなくなった人々
戦争が忘れられない50年代の人々の現実。スラム街に生きる子どもは教育もまともに受けられず、親からの愛はもらえないし、そもそも親がいないことだってある。だから幼くして働きに出なくてはいけないし、家事労働もしなくてはいけない。不良になることだってある。けれど彼らは可哀想なだけではない。盲目の老人や足がない男を襲って、金銭や荷物を強奪することだってあるのだから。弱き者がさらに弱き者に酷い仕打ちを与える。単純に愛と信頼は存在しない。普遍的な悪の事象だ。
盲目の老人は目が見えないが、現実がよく見えているし、ペドロは〈事件〉を見たが見ないふりをしたから、幻想/夢が見える。母や所長、ハイボはペドロのことをちゃんと見ていない。だからペドロが悪を取り払い善良になる物語と思える。
しかし上述の図式はあまりにも単純だ。老人に悪人の要素はあるし、ペドロが悪から逃れる行動は、彼をどんどん悪に染めていく。母やハイボに更生/更正の余地はない。単純な図式に当てはめようとすればするほど、本作をちゃんと見ていないことを宣告されているようだ。
誰しもに悪の要素がある。陳腐な相対主義に還元されそうで危ういが、ゴミ山に打ち捨てられることで徹底される。まず残酷さをみよ、と。
忘れられた作品
ルイスブニュエルのメキシコ時代の作品です。
若い時に見ました。なかなか昔は上映する事が希少でした。
どこで見たんだろ。映画館ではなく名作の上映会だと思う。
初期作品はダリと一緒に活動して前衛的な作品があり衝撃的でした。
晩年のフランス時代の作品はかなり上映されてました。リアルタイムで見た作品もあります。この作品を見たくてやっと見た時は強烈で、すぐ私の映画ベスト10に入りました。
それから三十年以上見てない。
メキシコの行政が犯罪抑止が目的で作らせた映画だった筈ですが、普通の人が見て犯罪をやめようと思うか疑問です。毒が強い。残酷だけどヒューマニズムに溢れています。甘々のヒューマニズムではありません。
私は溝口健二監督作品も好きですがヒューマニズムに満ちています。共通性を感じます。教養のレベルが常人と違います。
全2件を表示