「思想が混迷する20世紀初頭のフィレンツェを舞台に、ある男の生きる信念が描かれた感動作」わが青春のフロレンス Gustavさんの映画レビュー(感想・評価)
思想が混迷する20世紀初頭のフィレンツェを舞台に、ある男の生きる信念が描かれた感動作
この物語は、家族を抱えた一人の男が激動の社会を生き抜いていく生活感溢れるドラマであり、映像は19世紀末から20世紀初頭のイタリア・フィレンツェを舞台にした時代色を見事に再現して、実に味わい深く感動的な映画である。古都として高名なフィレンツェの舞台背景は美しく、その古色蒼然とした雰囲気が素晴らしい。社会主義や無政府主義の思想が飛び交う混迷の時代に、貧しくも直向きに生きる主人公メテロの物語は、父から受け継いだ家族の絆を我が子に繋いでいく。これは小説として読んでも感銘を受けるであろう。幾多の困難に立ち向かわなくてはならない時代の社会状況が主人公に降りかかりながら、けして諦めないメテオの信念が奇麗ごとだけに描かれていない点も説得力がある。彼に寄り添う妻エルシアの健気さも、この時代の愛の形として描かれている。そして、この映画の感動を盛り上げるエンニオ・モリコーネのテーマ音楽が効果絶大である。
1977年 2月8日 大塚名画座
監督のマウロ・ボロニーニの作品は、「華やかな魔女たち」「愛すれど哀しく」「沈黙の官能」しか観ていない。巨匠が多いイタリア映画の中では一流とは言い難い監督だが、この作品と「愛すれど哀しく」はボロニーニ監督に合った題材だったようで、成功した代表作になると思う。他の監督では味わえないボロニーニ監督の個性があり、素直に“いい映画”として印象に残るイタリア映画だった。
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