「究極の猫愛」ロアーズ odeonzaさんの映画レビュー(感想・評価)
究極の猫愛
映画はアフリカで単身、研究を続けている博物学者の夫を家族が訪ねるドタバタ劇、見どころはライオンたちに翻弄されるファミリーやドキュメンタリーのような猛獣の動きや表情でしょう。
今ならCGでどんな猛獣でも描けるだろうがこの映画は全て本物のライオンやトラなどが我が物顔で家の内外を闊歩しているのだからどうやって撮ったのか、どういう素性の動物なのか興味津々。
一見、じゃれ合っているように見えるが相手は猛獣だから見ている方も冷や汗もの、ムツゴロウさんならともかく、松島トモ子さんには絶対見せられませんね。案の定、スタッフ70名以上が噛まれたそうで撮影監督ヤン・デ・ボンさんは200針を縫う大けがを負い、出演のファミリー全員が噛まれていることから、評論家からハリウッドで最も危険な映画との酷評をもらったらしい。
(脱線)
妻役のティッピー・ヘドレンさんが「Satan's Harvest(1969)」の撮影でアフリカを訪れていた際に野生動物が密漁により絶滅の危機に瀕している実情を知り心を痛めたそうです、おそらく当時ヒットした「野生のエルザ(1966)」にも触発されたのでしょう、夫のノエル・マーシャルさんと企画を立ち上げました。動物たちは動物園やサーカスから調達、サンディエゴのソレダッド キャニオンに撮影用の家を建て実際に動物たちと暮らし始めたそうです。マーシャルさんは「エクソシスト(1973)」が大当たりで資金を得たようですが途中で洪水や山火事に合ったりして資金は底をつき家や私財の殆どを手放すなど製作は困難を極めたようです、ティッピー・ヘドレンさんは「鳥(1963)」の主演でヒッチコックさんにもらった毛皮のコートまで売ったとのこと。口の悪い同僚らはエクソシストの呪いなどと揶揄したようです。
完成後夫妻は離婚してしまいましたが映画の動物たちはティッピー・ヘドレンさんが基金を立ち上げカリフォルニアのシャンバラ保護区に保護されているとのこと、坂上忍さん同様、本当に動物好きなのですね。
映画を観る限り終始明るくコメディタッチで描いていますので陰にそんな苦労があったことは微塵も伺えません、じっくり味わって観なければと心を新たにいたしました・・。