「ヴェネツィアに咲く恋の花」旅情(1955) しゅうへいさんの映画レビュー(感想・評価)
ヴェネツィアに咲く恋の花
クリックして本文を読む
Blu-rayで鑑賞(字幕)。
主人公は典型的なアメリカ女である。髪は赤毛で顔はソバカスだらけ。仕事一筋の人生で、恋愛は擲って来た。気づけば中年となり、貯めたお金でひとり旅。ヴェネツィアの美しい風景に酔い痴れるも、ひとりの寂しさを隠し切れない。
これに関して劇中では特になんの説明も無いが、巧みな演技から全て読み取ることが出来るのがすごい。キャサリン・ヘプバーンでなくてはこなせない役柄ではないかと思った。
主人公は遠い異国の地で運命的な出会いを果たし、身を焦がすような激しい恋に落ちる。男女の心の襞が、水の都の鮮烈な風景と共に描かれ、とてつもない旅情を醸し出していく。
男の秘密が明かされ、住む国が違うふたりに決定的な別れがやって来てしまう。なんとも切ない。胸が締めつけられる。
男に見送りにくるなと言っておきながら、本心では来てくれることを期待して何度もホームで振り返る女。やがてやって来る男、しかし間一髪間に合わず、無情に走り去る汽車。
男の手には…。なんと気の利いた伏線か。落涙した。
ふたりとも、この想いをいつまでも忘れないだろう。いつの世も変わらぬ恋する男女の心の機微を描いた名作であった。
コメントする