「ハリウッドに「未開の地」として描かれる南部」夜の大捜査線 jin-inuさんの映画レビュー(感想・評価)
ハリウッドに「未開の地」として描かれる南部
舞台はアメリカ南部、ミシシッピ州の田舎町です。
誤認逮捕を繰り返す、無能な警察署長ビル・ギレスピー(ロッド・スタイガー)。
虐げられた貧しい黒人たち。
車に南軍旗をつけた暴力的な若者たち。
奴隷制を彷彿とさせる綿花のプランテーション。
楽しみは酒とセックス。
裏で堕胎業を営む雑貨屋の黒人おばさん。
性格の歪んだよれよれTシャツのダイナーの男。
貧しさからチンケな犯罪を繰り返す男たち。
ホントの姿なのかも知れませんが、本作が描く南部の住民たちの姿は貧しく、知性もなく、差別意識が強く、短絡的かつ暴力的で、悲惨です。
一方、北東にニューヨーク、南西にワシントンD.C.という都市に挟まれた大都会フィラデルフィアからやってきた黒人刑事ヴァージル・ティッブス(シドニー・ポワティエ)。
いつもきちっとしたスーツ姿。
高給取り。
科学的捜査で事件の真相に迫る知性の持ち主。
侮辱を許さない誇り高い男。
構図としては南部のホワイト・トラッシュvs北部のエリート黒人です。1967年のハリウッドが描くアメリカの南部は暗黒そのもの、まるでいいとこなし。当時の南部人たちは、この映画をどんな思いで観たのでしょうか。そしてその後、南部人たちは変わったのでしょうか。
ミスター・ティッブスと相互理解を深め態度を変えたギレスピー署長の姿にかすかな希望を感じさせ映画は終わりますが、2025年の現在のアメリカの情勢を見ていると、南北の分断はより深まったのではないかと思えてきます。
主題歌はクインシー・ジョーンズ作曲、レイ・チャールズ歌、名曲です。
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