ミラノの恋人のレビュー・感想・評価
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南北問題と公害を扱った真面目な社会派映画に主演するジュリアーノ・ジェンマの真摯な演技
マカロニ・ウエスタンのアクションスター ジュリアーノ・ジェンマの珍しい社会派映画の一本。監督は「ブーベの恋人」「天使の詩」といった繊細で余情味豊かな佳作を手掛けたルイジ・コメンチーニ。共演が「イタリア式離婚狂騒曲」のステファニア・サンドレッリ。イタリアが抱える南北問題と北イタリアの工業地帯の公害を扱っている硬派な脚本であり、ジェンマとサンドレッリ共に極普通の恋人たちを地味ながら誠実に演じている。ただし、映画の最初と最後で描かれている物語の決着の仕方は、主人公ヌッロの一方的な怒りが、有毒ガスを放置した工場の社長に向けられる。愛する恋人を失った悲しさと改善を怠った会社組合への憤りは解るものの、映画としては共鳴しにくい。残された唯一の最終手段と思わせる、そこまでの主人公の葛藤が描き切れていないからだ。
興味深いのは、ヒロイン カルメラの兄パスクァーレの存在で、北イタリアに移住してきても故郷シチリアの風習や伝統を頑なに守り、妹の恋愛に関しても口出しをするところ。現代でも保守的な家族主義を貫くのかと、意外だった。兄パスクァーレがヌッロとの交際に反対する定石の展開。公害問題と南北問題が絡み合った悲恋ドラマとして創作されたストーリー。絶賛には至らないが、その目指しているものの真摯な映画制作は好感持てたし、ジェンマも好演している。
1977年 1月22日 高田馬場パール座
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