劇場公開日 1989年8月12日

「ジャッキー版人情喜劇」奇蹟 ミラクル バラージさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5 ジャッキー版人情喜劇

2025年5月27日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

笑える

幸せ

80年代ジャッキー映画の掉尾を飾る人情喜劇映画。フランク・キャプラ監督が1933年の自作『一日だけの淑女』をセルフリメイクした1961年の『ポケット一杯の幸福』をジャッキーが「勝手に」リメイクした作品である。当時の香港はおそらくその微妙な立ち位置から治外法権地帯で無許可作品が多かった。勝手に『北斗の拳』もどき映画や『ドラゴンボール』もどき映画も作られてたような。

やはり何度観ても面白い。オリジナルがオリジナルだけにジャッキー映画にしてはアクションが控え目で、どちらかというとヒューマンコメディというかいわゆる人情喜劇映画だ。オリジナルがあるだけにストーリーが非常にしっかりしており、当時世界に2台だか3台だかしかなかったというステディカムのクレーンカメラによる流麗なカメラワークも素晴らしい。さらに1920年代香港を再現した豪華なセットという非常に贅沢な作品となっている。

配役もこれ以上ないほど豪華なメンバーで、まずヒロインにアニタ・ムイ。実は映画雑誌で最初に写真で見た時はあまり好みではなく、なんだかオバサンくさい人だなとちょっとがっかりしたんだが(夏木マリに似てる)、映像で見ると可愛いコメディエンヌぶりで非常に魅力的だった。ジャッキーも気に入ったのか90年代にはマギー・チャンなんかと同様に何度かジャッキー映画に起用されている。本業はどっちかというと歌手で、本作でもナイトクラブの歌姫役で艶のある歌声を披露しているが、この頃の香港映画は基本吹替なので、歌のシーンだけ突然本人の地声になって違う声になってしまい戸惑った記憶あり(笑)。それから薔薇売りオバサン役のクェイ・アルイ(グア・アーレイ)。後にアン・リー監督の台米合作映画『ウェディング・バンケット』にも出演する台湾のベテラン女優だ。そしてウー・マ、トン・ピョウ、リチャード・ンらジャッキー映画でお馴染みの芸達者な面々が脇を固め、香港実写映画『孔雀王』でデビューしたグロリア・イップも華を添えている他、友情出演陣も多数にのぼる豪華な顔ぶれだ。

なお、この映画も香港版と日本公開版で違いがあるが、珍しく日本公開版のほうが10分ほど短い。トン・ピョウやリチャード・ンのコメディシーンに削られたところがあったようだ。

バラージ