水の中のナイフのレビュー・感想・評価
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ポーランド体制側・大人側の理不尽さ・手強さ・したたかさと、それに対抗できない無力な若人
ロマン・ポランスキー監督による1962年製作のポーランド映画。
出だしの走る車と風景が重なって流れる映像が印象的で、このての映像の元祖であろうか。背景に流れるコメダによるお洒落なジャズもとても素敵。そして、ヨットでの映像の数々も印象に残る。船上でマラノウッツが上向きに横たわる真上からの映像とか、どうやって撮ったのだろうか?
とは言え前半、何かが起きそうで起きず、ヨット航海そのものには興味が乏しい自分には少々退屈なところがあった。後半は、サスペンス調が増したし、妻役ウメッカの眼鏡取った時の滴る色気はなかなか。
但この三人の感情劇を通して、何を描きたかったは自分には判然としない部分も有る。まあ、ポーランドの体制側・大人側の理不尽さ・手強さ(命令調だが、実際ヨット上手く扱うしタフに泳ぎきるニェムチック)、そしてしたたかさ(寝たものの旦那の手前かあっさり若者をヨットから追い出す奥さん)。唯一の武器、大事なナイフも旦那に取られて水の中へ捨てられ、それに対抗する術も無い無力な若人を描いている様には思えた。若きポランスキーがこの後、絶望感を感じ、国を飛び出すというのも必然の流れということか。
ラスト、体制側の象徴ニェムチックが警察への自首、さもなくば妻の言葉(浮気した)を信ずるかの分岐(どちらも辛い道)で終わるのは、とてもユニークで、ポーランドの未来の象徴?なのだろうか。
脚本は、イエジー・スコリモフスキ、ヤクブ・ゴールドベルク、及びポランスキー監督。撮影はイェジー・リップマン(地下水道等)、音楽はクシシュトフ・コメダ(ジャズピアニスト、ローズマリーの赤ちゃん等)。
出演はレオン・ニェムチック、ヨランタ・ウメッカ(妻)、ジグムント・マラノウッツ(若人)。
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