「これってコメディー映画なんですか?」ミスター・ベースボール ジャワカレー澤田さんの映画レビュー(感想・評価)
これってコメディー映画なんですか?
コメディー映画のはずなのに、一体どの部分でお客さんを笑かそうとしているのかまったく不明の作品です。
それは冒頭から始まります。朝目覚めたジャックは、女と一緒にベッドにいる。ところがカメラを引くと、室内には同じようなベッドがたくさんあって一台毎に裸の女が寝ている……。これって「それだけジャックはビッチが取り囲っている」というオーバーな表現だと思うんですが、はっきり言って意味不明な図にしかなってないんですよ。
それはジャックが中日ドラゴンズに入団してからも続きます。
中日の入団会見で、ジャックはマスコミの前で皮肉交じりのことを言います。それを通訳が当たり障りのない内容に改竄して翻訳する……って、おいおいちょっと待て! 入団会見にいる記者の中に、誰一人として英語の分かる奴がいないというのは絶対あり得ないでしょう。それに、この記者会見をテレビカメラで撮影されていたら「あっ、こりゃ通訳が意図的にコメントを改竄してるぞ!」という流れに絶対なり、そうなると中日そのものが非難されてしまうかもしれません。
そんな馬鹿なこと、通訳が勝手にやるわけないじゃないですか。
高倉健演じる内山監督は、どう見ても星野仙一がモデル。けれど、内山監督は審判に抗議するジャックを「あんな抗議をするとは何だ。球団の恥だ!」と責め立てます。……いやいや、中日の監督やってた頃の星野仙一って、乱闘が発生したら誰よりも先にダイヤモンドに躍り出る人じゃなかったですかね?
それと、ジャックに与えられた「Mr.BESUBORU」という渾名……いや、あの……大抵の日本人は「BASEBALL」くらい書けますって。単に発音がそんな感じってだけですよ。こんな具合に、この映画では「間違った日本」がふんだんに散りばめられています。
そしてもうひとつ、ジャックの備品破損について。室内でバット振り回して物壊すって、これ星野仙一もやってるんですよね。「日本の野球は礼儀が第一」というのはとんでもない誤解だということは、90年代の星野を見ていたらすぐに理解できたはずなんですが……。