「感謝の一言」ポセイドン・アドベンチャー(1972) keebirdzさんの映画レビュー(感想・評価)
感謝の一言
クリックして本文を読む
この頃の私にとって洋画とは、松戸輝竜館で最終回開映の直後通用口から忍び込んでタダ見する(犯罪‥ 時効ですよね)か親父に銀座連れてってもらって日劇とかで観るかだったが、実際圧倒的にTVの「ロードショー」「洋画劇場」の吹替えで見ることの方が普通だった。
そんなまだヒトとして全く出来上がっていない頃(今も大人として全然出来ていないが‥)、この「パニック」映画を分かりやすい吹替えで観たことは
無情に降りかかる災難とは何か
決断とは何か
命を守るとは何か
自分の命よりも先に守るものは何か
希望とは何か
そういった、社会に生きる人間にとってこの上もなく大切で難しいことを、たった2時間で詰め込んでくれた稀有な体験になった。アーネスト・ボーグナインの頑固者刑事は見ていて反感を覚えたが、思えばそれでも彼は自分のなれるベストバージョンの強く柔軟な男だった。往年の美人女優シェリー・ウィンタースの元スイマーの献身そしてジーン・ハックマンの型破り牧師は、その基底にあるかも知れない宗教観や犠牲心などを超越した人の力を教えてくれた。
それまでずっと無かった青空の下、「The Morning After」が流れる救出エンディングのカタルシスと一片残る悲しさの感慨は、小学生の自分には実に衝撃的だった。
一映画への賛辞をこうまで書けるとは、やはり幼少期の感受性に作用するシネマの影響力は凄い、と我ながら思う。そんな時にこの映画を観られて良かった。これからこんな災難が実際に訪れた時、自分は多分に迷うがたぶん間違わない、と終生思わせてくれている自分にとって有り難い映画。
そして今2025年2月、名優ジーン・ハックマンとご家族、どうか安らかに。
コメントする