劇場公開日 1973年3月17日

「牧師の最期にイエスの姿が重なったが…」ポセイドン・アドベンチャー(1972) KENZO一級建築士事務所さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0牧師の最期にイエスの姿が重なったが…

2021年7月19日
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鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

NHKBS放送を機に何回目かの再鑑賞。

色々な作品が頭をよぎった。

一艘の豪華客船に乗り合わせた登場人物の
たくさんの人生が交差する
「グランド・ホテル」方式のような群像劇。
誰が逃げ切れて、誰が命を落とすのか、
「大脱走」のような集団脱出劇の装い。
最高速度を求める船主サイドと
安全を優先したい船長との確執は
「タイタニック」も思い出す。

これまでも、自然災害物、航空機物、
海洋物、宇宙物等々、
たくさんのパニック映画を観てきたが、
特撮のレベルも、人間描写も、
この作品が一番の優れものとの印象だ。

それにしても、この映画、随分と大切な
人間関係を引き裂く展開ではある。
女性シンガーと兄、ユダヤ人老夫婦、
警察官と元娼婦の妻、
そして神とその遣い手の牧師。

ただ、牧師が神と対峙しながらも
最後の自己犠牲の姿は、
「どうして私をお見捨てになったのですか…
私の霊をみ手に委ねます」との
イエスの最期の言葉に重なり、
牧師は神と引き裂かれたのではなく、
ある意味、彼はキリストであって、
人々を約束の地に導く役目を終え、
むしろ、神に身を委ねたかのようにも
思える鑑賞になった。

KENZO一級建築士事務所