「無差別的差別」ブレージングサドル 因果さんの映画レビュー(感想・評価)
無差別的差別
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あらゆるセンシティビティに対して分け隔てなくストレートな悪意をぶつけまくる悪趣味映画。黒人、白人、ユダヤ人、娼婦、知恵遅れ、カウボーイ、オカマ、ナチス、KKK、ハリウッド…カメラに映り込んでしまったものは何であれコメディの対象と化してしまう。
差別性の徹底的漂白へと直行する昨今のハリウッドとは対極的な、いや、徹底性という点においてはむしろ同類の熱量を孕んだ作品といえる。あらゆる概念の差異を消し去ることが差別の解消につながるとすれば、漂白と同様に、真っ黒に塗り潰すこともまた一つの有効な手段なんじゃないかという。まあ、やりすぎであることに変わりはないし、そもそもこの監督はそんなことはちっとも考えていないだろうけど。
アメリカ文化に通暁していないと理解不能の箇所も多いため、コメディ映画として完璧に楽しめたかといえば首肯し難い。しかしラストで主人公が馬から真っ黒な高級車に乗り換えてどこかへと走り去っていくシーンはかなりよかった。いくら無茶苦茶やっても最後にキッチリ落とし前はつけるあたりがニクい。コメディ映画というのは最も監督の知性と感性が問われるジャンルだな、と改めて思った。
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