「プリンスの世界観にどっぷりとつかれる作品」プリンス サイン・オブ・ザ・タイムズ moviebuffさんの映画レビュー(感想・評価)
プリンスの世界観にどっぷりとつかれる作品
IMAXにて鑑賞。プリンスの全盛期だけあって、その才能が爆発している。曲のアイデアとそのバリエーション、バンドのタイトな演奏、そして90年代後半には晩年の悲劇につながる股関節の痛みの問題などで控えめになっていってしまう、その前の時代のダンスのえげつないキレとスピード感。
ステージのパフォーマンスとそのセットの祝祭ぶりから、JBやパーラメント等、彼がファンクの歴史を継承し、更にそこにロックを融合させた、そういうアーティストだということもよくわかる内容にもなっている。
プリンスが自ら監督したこの映画の映像に関して言うと、80年代のアメリカ映画のポップな空気を封じ込めたカラフルなライティングのムードが最高である。80年代のアメリカのポップカルチャーのピークが85年ぐらいで、その最後の輝きのようなものがここに封じ込められている。
ただ、面白いのが、実はそのムードが最後のThe Crossで一変する。今の我々が見ると、さっきまでの一大ファンクショーとは趣が異なるえらくストレートなギターロックナンバー。アルバムで聴いた時には気づいていなかったが、それはさっきまでの80年代的なポップサウンドとは違い、やたら生々しく荒々しい。
意識的か無意識的か、プリンスはグランジやレニー・クラビッツが登場する前の87年に既に次の時代のサウンドを捉えていたのだ。実際にはブラックアルバムでファンク路線に戻る訳だが、それにしても予言的な楽曲である。この曲を最後に持ってきていることがなんだか凄いなと思った。
皮肉なのはロックが衰退している今、他のファンクナンバーの普遍性と比べ、The crossが一番音楽的には普通だなと思ってしまうことも、時代の流れとして面白い。
この作品がプリンスにとってライブのベストなのかはわからない(ご存知の方もいると思うが、この作品は実際のライブと再撮影のミックスである。また、シーナイーストンのパートだけ、別日にビデオ撮影されたため、やたら映像が粗かったりする。)が、それでもこれだけのハイクオリティの映像と音で全盛期のライブを映画として残してくれていた事に感謝。(あれだけMVには力を入れていたマイケルはなぜ、フィルムで全盛期のライブを残さなかったのだろうか・・。)とにかくプリンスの世界観にどっぷりとつかれる満足できる作品だった。
