「素晴らしいビルドゥングス・ロマン映画です」舞踏会の手帖 KENZO一級建築士事務所さんの映画レビュー(感想・評価)

4.5素晴らしいビルドゥングス・ロマン映画です

2020年7月8日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

NHKのBS放送の録画を1/31に続いて再鑑賞。

これを切っ掛けにレンタルビデオで
「にんじん」「望郷」「運命の饗宴」
「巴里の空の下セーヌは流れる」
「陽気なドン・カミロ」
「わが青春のマリアンヌ」と続けて
鑑賞したが、デュビビエ作品の中では
この映画が一番好きだ
(残念ながら「商船テナシチー」と
「旅路の果て」は観る手段がありません)。

世間知らずで本当の愛を知らないまま
若くして未亡人になった主人公が
16歳の舞踏会で踊った思い出の相手を
訪ね歩き初める。
そこで若い頃の夢を捨ててしまっていた彼らの
かつては受け止めることの出来なかった
想いを知る。
そしてその旅の最後に最も憧れていた彼氏の
亡くなったことを知り身寄りの無くなった
彼の子供を引き取り育て始める。

これらの行動に対し、
人生に幻滅を感じた旅行だったとか、
最愛の彼の面影が残る少年を育てるのは
未だに過去に捕らわれた代替え愛だとか
の評論があるが果たしてそうだろうか。

私はこの映画は優れた
ビルドゥングス・ロマンの物語だと思う。

彼女は思い出旅行で厳しい現実を
見せつけられ、再会を後悔しなからも、
実は人として成長していた。
そして養子にした少年には、
彼女がかつて経験したような素敵な舞踏会
を経験させようとすると共に、
それに上乗せして彼女自身が旅で見てきた
たくさんの生き様から、
人生には厳しい現実がある一方、
時が過ぎても捨てきれない人を想う優しさ
があること等、
様々な人生の豊かさを伝えていくのだろう。

異性愛を母性愛に変えた彼女の新たな
スタートのエンディングに思えた。

人は幾つになっても新たな価値を見つけ
人生の再スタートラインに立つことが
出来る、と教えてくれる素晴らしい
ビルドゥングス・ロマン映画だった。

あなたのデュビビエのNo.1映画は何ですか?

KENZO一級建築士事務所
活動写真愛好家さんのコメント
2023年5月30日

コメントありがとうございます😊こちらこそ宜しくお願いします

活動写真愛好家