「忘れられない青春のおもいで」舞踏会の手帖 Gustav (グスタフ)さんの映画レビュー(感想・評価)
忘れられない青春のおもいで
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ストーリーテラーの名手ジュリアン・デュヴィヴィエ監督の「望郷」と並ぶ戦前の代表作。夫を亡くしたばかりの若き貴婦人が、古い手帖に記せられた男性たちを探し訪ねる物語をオムニバス形式で描いた、過去と現在の移ろい。大戦前のペシミズムが色濃く反映された道程を辿り、ラストの意外な結末にひとつの人生訓が秘められている。人は愛を失っても生きていけるが、自分が抱く青春の想い出は捨て去る事が出来ないと。映画における愛と青春なんて、ありふれた題材ですが、この二つを比較したところが何ともユニークで希少価値があります。恋愛至上主義が強固なフランス映画の多くは、友情と恋愛の二者択一を題材に、そのほとんどが、恋愛優位の結末で占める印象を持ってきました。青春を共に過ごした故人の子息を養子にする貴婦人の選択には、清い友情を交わした青春時代に縋ってしまった人間の正直過ぎる姿があります。それは哀れであり、また羨ましく思えるのです。このラスト数分の為に描かれた超現実的な物語には、人生流転の縮図と青春を想い出に生きる女性の本心が見事に描かれている。
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